研究課題/領域番号 |
24760707
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
仲野 友英 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 研究員 (50354593)
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キーワード | プラズマ・核融合 / 原子物理 / 原子データ / タングステン / 電離断面積 / 再結合断面積 / 分光 |
研究概要 |
近年開発された原子構造計算プログラム FAC によって高精度な断面積の計算を行うと共に,その精度を実験的に測定されたスペクトル線の強度比から評価し,これによって誤差評価付き電離・再結合断面積を世界で初めて生産することを目標としている. 本年度には,W44+,W45+およびW46+の密度比の計算値とそれらの測定値の比較を進めた.特に,測定したスペクトル線の強度から W44+, W45+ および W46+ の密度を導出するための手法の拡張に注力した.前年度までは,W44+ および W45+ の 4s-4p 遷移によるスペクトル線の強度比が電子温度に依存することなく,W44+ と W45+ の密度比と比例関係にあることを利用して解析を進めていた.これと類似の関係を W44+, W45+ および W46+ の 3p-4d 遷移によるスペクトル線の強度比に対しても成り立つことを見出した.さらに,4s-4p スペクトル線の場合と同様にW44+, W45+ および W46+ の 3p-4d スペクトル線も波長的に近接しており,同時測定が可能であることが判明した.この性質を利用して,JET 装置において同時に測定した W44+, W45+ および W46+ の 3p-4d スペクトル線の強度比から,これらのタングステンイオンの密度比を導出し,計算値と比較した.初期的な比較ではあるが,それらは良い一致を示す傾向にある.分光器の感度など,測定スペクトルの検証をすすめ,結果の妥当性を検討しているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の推進方策の修正に従って,W62+および W63+ のデータ生産・解析よりも JET における W44+, W45+ および W46+ の解析に注力した.ここで提案している 4s-4p 遷移に対する解析手法を別の遷移(3p-4d遷移)にも適用できることを見出し,その初期的な解析が完了した.当初の計画よりも本手法の適用範囲を広げることに成功したことから,目標をより高いレベルで達成できる可能性がある.他方,当初の計画の一部の優先度を低下させたことも勘案して,計画はほぼ順調に進んでいる,と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の推進方策で修正したように,引き続き W62+およびW63+のデータ生産の優先度を低下させる.代わりに,W44+,W45+ および W46+ のデータ生産を,4s-4p (W46+ を除く)および 3p-4d スペクトル線の解析の両者から進める.両者の整合性を調べることによって,より高い精度で誤差が評価された電離・再結合速度係数(断面積)のデータ生産をすすめる. この成果を,第41回ヨーロッパ物理学会などで発表して,専門家から意見を伺い,最終結果の論文化に向けた確認作業に資する.
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次年度の研究費の使用計画 |
JET 装置での実験のためカラム核融合研究センターへの出張旅費を計上していたが,幸に,所属元の研究機関から1年間の滞在旅費の支給が認められたため,その出張旅費を使用しなかった. 主に,国際学会への出張旅費と JET 装置で追加の実験を行うための出張旅費,および計算データの保存用ストレージの購入に研究費を使用する.
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