平成26年度は、平成25年度に拡張した運動論的電磁流体力学(MHD : MagnetoHydroDynamics)モデルに、イオン平衡分布関数に対して、トロイダル回転に起因する遠心力の効果を導入した。MHDモードと粒子運動のエネルギー交換を表わす項は分布関数の径方向微分に依存するため、トロイダル回転シアの効果を導入することができた。拡張された運動論的MHDモデルを、平成24年度に構築した抵抗性壁モード(RWM : Resistive Wall Mode)解析コードへと実装した。JT-60実験の平衡データ(磁場、圧力、密度分布)を基に、トロイダル回転とトロイダル回転シアを変化させてRWM安定性解析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。従来の運動論的MHDモデルでは、トロイダル回転による安定化効果が限定的であるため、安定な領域の中に不安定な領域が現れる。一方、本研究で定式化した拡張された運動論的MHDモデルでは、トロイダル回転、トロイダル回転シアによる安定化効果がより正確に評価されるため、安定な領域と不安定な領域が分離し、安定な運転領域が広がる。トロイダル回転及びトロイダル回転シアによるRWM安定化は実験結果の傾向と一致している。本研究は、数十年用いられてきた運動論的MHD理論の拡張になっている。本成果により、RWMを安定化するために最適な回転分布を調べることが可能になり、高性能トカマクにおける高圧力プラズマの安定な運転領域をより正確に同定することができるようになった。
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