研究課題/領域番号 |
24760711
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
中村 誠 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究員 (80462886)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核融合 / 周辺プラズマ / ダイバータ / 非接触プラズマ / 動的解析 |
研究概要 |
将来の核融合炉の成立は、非接触ダイバータプラズマ方式によるダイバータの除熱が鍵を握る。非接触状態への遷移の物理にとって、運動論的効果が重要と考えられているが、計算機資源の制約上、現状の大規模コードシミュレーションでこれを取り扱うことができない。本研究の目的は、運動論的効果を取り入れ、なおかつ現実的な計算時間で解析可能な新しい非接触ダイバータプラズマ流体モデルを構築し、非接触ダイバータプラズマの発現機構の解明を行うことである。 平成24年度の研究実施項目は、イオン温度非等方性を考慮したプラズマ流体モデルの開発とイオン温度非等方性が非接触ダイバータプラズマ発現に与える影響の解析である。イオン温度非等方性を考慮したプラズマ流体モデルの開発を行った。従来、周辺プラズマ流体を記述する輸送方程式群は、イオン粒子数保存式、イオンの運動量保存式、電子のエネルギー保存式、イオンのエネルギー保存式から構成される。そこでは、磁力線に平行方向と垂直方向でイオン温度は等しいと仮定していた。そこで、従来のイオンのエネルギー保存式を拡張し、磁力線に平行方向と垂直方向の温度成分それぞれの方程式を構築した。その結果、周辺プラズマを記述する輸送方程式群は、4つから5つに増加した。この拡張された輸送方程式群を導入するために、研究代表者が開発している1次元周辺プラズマ流体モデル数値解析コードを改良した。 しかしながら、イオン温度非等方性が非接触ダイバータプラズマ発現に与える影響の解析までには至らなかった。数値不安定性の抑制に予想外の時間がかかったためである。次年度は、今年度開発し妥当性が確認された数値解析コードを用いて、イオン温度非等方性が非接触ダイバータプラズマ発現に与える影響を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発したモデル方程式を数値計算コードに実装をする際には、境界条件の実装が重要である。適正な境界条件が実装できなければ、たとえ計算体系全体では数値的に安定なスキームを導入していても、境界において数値不安定が発生し、それが計算体系全体に伝播し、遂には計算が破綻する。ダイバータプラズマの境界条件は、非線形性が極めて強い特殊な形式であるため、従来の数値流体力学で知られている境界数値計算スキームの適用が難しく、数値計算を行いながら試行錯誤を繰り返す必要がある。この試行錯誤に予想外の時間を要したため、当初計画よりやや遅れる結果となった。 しかし、最終的には数値計算学的に妥当と考えられるコードが開発できたため、今年度の研究活動により遅れを回復できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開発した数値解析コードを用いて、前年度に達成できなかった様々なプラズマ条件のもとで非接触ダイバータプラズマの発現の動的挙動を解析する。とりわけ、高リサイクリングダイバータから非接触ダイバータへの遷移における、イオン温度の非等方性の影響を解析する。 さらに、当初計画で今年度実施する予定であるELMにより間欠的に中心プラズマ領域から排出される高エネルギー電子の輸送を考慮に入れられるように、プラズマ流体モデルを拡張する。このモデル方程式に基づき数値解析コードを開発し、ELMによる間欠的高エネルギー電子による非接触ダイバータプラズマの再接触現象を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を発表しダイバータプラズマモデリングについて国内外の専門家と討論・情報交換を行い、非接触ダイバータプラズマ形成機構解明をより一層進展させることを目的として、国内学会・国際会議へ参加するための旅費を計上する。さらに、研究で得られたデータを格納するためのバックアップHDD等の消耗品費を計上する。
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