研究課題/領域番号 |
24760713
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桐島 陽 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00400424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フミン物質 / カロリメトリ / 電位差滴定 / エンタルピー / エントロピー |
研究概要 |
地層中で放射性核種と強く相互作用する可能性のある天然の物質のひとつとしてフミン物質が挙げられる。フミン物質とは、植物や動物の死骸、排せつ物が微生物による分解や温度・圧力による縮合を受けて生成する。難分解性高分子化合物の総称である。フミン物質には以下のような共通する性質がある。 ・分子構造が不均質で複雑 ・酸解離性官能基に富み、金属イオンと強く錯生成 ・光吸収により呈色を示す 本年度は、フミン物質の錯生成反応の前段階として、水溶液系内で常に起こる反応であるプロトン化反応に着目した。これまでフミン物質のような高分子有機酸には適用されてこなかったカロリメトリ手法を用いることで、プロトン化反応におけるエンタルピーやエントロピーといった熱力学量を決定し、その反応機構を考察した。また、フミン物質と同じく解離性官能基としてカルボキシル基を持つ高分子有機酸のポリアクリル酸(PAA)のプロトン化反応にも同様の手法を適用した。ポリアクリル酸は均質な構造をしているので、フミン物質とポリアクリル酸の熱力学量を比較することで、フミン物質の組成不均質性がプロトン化反応に及ぼす影響を明らかにすることができる。Waskish Peat フミン酸とElliot Soil フミン酸のプロトン化反応について、電位差滴定と熱量滴定を用いてギブス自由エネルギー(⊿G )、反応のエンタルピー(⊿H )、反応のエントロピー(⊿S )を得た。さらにポリアクリル酸との比較実験により、フミン酸のプロトン化反応は高分子電解質性によって主に特徴づけられ、組成不均質性はプロトン化反応に大きな影響を及ぼさないことが判明した。今年度の研究によりフミン酸のプロトン化反応機構の知見が得られた。次年度以降はフミン酸と金属イオンとの錯生成反応機構を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に平成24年度の研究実施計画として記載した事項については実験結果が得られ、達成された。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はPAAと金属イオンの相互作用について、(1)PAAと金属イオン相互作用の二電極電位差滴定、(2)PAAと金属イオン相互作用の熱量滴定の実験を行い、検討する。金属イオンとしては性能の高いイオン選択性電極が入手可能な、Cu(II)を取り上げ、申請者らの先行研究で開発した二電極電位差滴定法により幅広い溶液条件で錯生成を検討し、錯生成熱力学量の解離官能基密度依存性やイオン強度依存性、さらに高分子酸の分子量依存性を評価し、反応機構についての考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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