研究概要 |
軽水炉燃料被覆管材料として用いられているジルコニウム合金の腐食については、析出物や形成される析出物との関連が指摘されているものの不明な点が多い。本研究ではセラミックファイバーと複合化させることによって強度・耐食性を高めることを試み、またここから析出物の役割を考察し、腐食のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 初年度はSiCファイバーおよび粒子をジルコニウム合金中に分散させ、腐食試験を行いその酸化膜の微細構造や残留応力の観察を行った。耐食性は大幅に減少してしまい、これはSiCとジルコニウムとの接合が弱いためと推察した。最終年度はこの結果から既存の析出物とのジルコニウムの基礎物性を評価することとし、Zr(Fe,Cr)2、Zr2(Fe,Ni)、β-Nb(Zr)合金を作製しその機械的特性を測定した。ジルコニウムと比較してZr(Fe,Cr)2がセラミック的な高い硬度・ヤング率を示す一方で、Zr2(Fe,Ni)はいずれも低い値を示した。β-Nb(Zr)はジルコニウムに近い格子定数と機械的特性、また高い延性を示した。腐食試験後の酸化膜中の残留応力はZr-Nb合金が最も高く、近い格子定数等に起因する強い接合が高い耐食性を示すものと推察された。
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