研究課題/領域番号 |
24760717
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 万也 広島大学, サステナブル・ディベロップメント実践研究センター, 特任講師 (60377992)
|
キーワード | 生物性マンガン酸化物 / アクチノイド / 吸着 |
研究概要 |
マンガン酸化物はアクチノイドを強く吸着し、環境中でのアクチノイド移行を遅延させる効果があると考えられる。一方で、生物性マンガン酸化物と共存する微生物(マンガン酸化菌)が排出する有機物はアクチノイドと錯体を形成し水溶液中で安定化することから移行を促進させる可能性がある。環境中のマンガン酸化物はほとんどが微生物起源であると考えられており、生物性マンガン酸化物を用いてアクチノイドの吸着挙動を評価する必要がある。これまでの研究において生物性マンガン酸化物へのアクチノイド吸着は非生物的に人工合成したマンガン酸化物とは大きく異なることが示唆された。そこで、本研究計画では生物性マンガン酸化物へのアクチノイドの特異的な吸着機構を明らかにすることを目的とした。 今年度はNp(V)の吸着挙動に着目して研究を進めた。生物性マンガン酸化物と無機化学的に人工合成したマンガン酸化物に対してNp(V)の吸着実験を行った。その結果、Np(V)は非生物性マンガン酸化物へ強く吸着する結果が得られたが、生物性マンガン酸化物へのNp(V)吸着はかなり弱いことが示された。非生物性マンガン酸化物への強いNp(V)吸着はマンガン酸化物表面上でのNp(V)の酸化の可能性を示唆している。一方、生物性マンガン酸化物は表面にMn(II)が吸着していることがX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの測定結果から明らかとなった。このようなマンガン酸化物表面上のMn(II)とNp(V)の間の吸着の競合がNp(V)吸着量を低下させた可能性が考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り生物性マンガン酸化物への特異的なアクチノイド吸着挙動が観察された。生物性マンガン酸化物へのアクチノイド吸着実験はおおむね順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
マンガン酸化物表面上でのアクチノイドの吸着構造を明らかにする。マンガン酸化物表面上においてNp(V)が酸化の可能性も含めて生物性マンガン酸化物と非マンガン酸化物との間のNp(V)吸着メカニズムの違いを明らかにする。U,Th,Puなどの他のアクチノイドとの吸着挙動の違いについても調べる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
旅費等が当初の予定よりも節約できたため。 今年度の旅費に充てる予定である。
|