本提案研究では、東京電力福島第一原子力発電所の炉心溶融事故により発生した放射性物質及び海水を含む炉心冷却水の包括的且つ廃棄物の減容化を図った処理技術について検討を行った。本提案研究では、汚染水処理システムより発生が予想される放射性物質を含む塩廃棄物(海水)及び中性子吸収剤として注入したホウ酸を利用し、安定的なホウ酸塩ガラス固化体の作製を目指した。 平成24年度の試験では、ホウ酸塩ガラス作製条件の最適化、ホウ酸塩ガラスの添加元素の選定及び各ホウ酸塩ガラスからのマトリックス元素等の浸出挙動について基礎的な検討を行った。本試験の成果からホウ酸塩ガラスは、B:Na = 1.0:0.5、固化体作製時の溶融条件を5 ℃・min-1で昇温し1100 ℃ 3時間保持が最適な作製条件であることを見いだした。また、ホウ酸塩ガラスに亜鉛を添加することでNaの浸出特性を向上できることを見いだした。 平成25年度の試験では、平成24年度で得られたホウ酸塩ガラス作成の最適条件を基に、汚染水に混入が予測される放射性物質の模擬元素を混入し、それらがホウ酸塩ガラスに与える影響について検討した。また、それらの元素の固定化状態についても浸出試験等により評価した。本試験の成果から放射性物質の模擬元素の混入によっても均一なガラス形成を行うことが可能であることが確認された。 平成26年度の試験では、これまでに得られたホウ酸塩ガラス作製の最適条件を基に、セシウムを吸着させたゼオライトの固定化挙動について評価した。本試験ではホウ酸塩ガラスへのゼオライトの充填量、固定化に最適なゼオライトの形状(粒度等)、固定化状態について検討した。本試験の成果からホウ酸塩ガラスによりCsを吸着したゼオライトをガラス固化することができた。また、溶融時においてもゼオライトに吸着したCsのホウ酸塩ガラスへの移行は少ないことが示された。
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