研究課題/領域番号 |
24760719
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
鈴木 義規 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (20455281)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バイオフィルム / カラム電極 / 放射性核種 |
研究概要 |
本研究では,様々な金属還元能を有する鉄還元菌のバイオフィルムとフロー電解法であるカラム電極電解法を組み合わせた新規な放射性核種の回収法の確立を目指している。この手法は,金属還元酵素を有する微生物のバイオフィルムを繊維電極表面に修飾することで,従来の電極による電解還元では回収できなかった放射性核種を迅速に還元回収し,電解還元法の適用範囲を格段に広げることを目的としている。本年度は,カラム電極電解法のシステムの構築とカラム電極電解法で用いるグラッシーカーボン(GC)繊維電極表面でのバイオフィルムの形成を行った。バイオフィルムの形成に先だって,0.5 M硫酸溶液中で+1.0 から-1.0 V対銀塩化銀電極(SSE)の間で電位走査を繰り返し,GC繊維電極を処理した。鉄還元菌の培養液をGC繊維電極に流す前に,70%エタノール溶液または1%次亜塩素酸溶液を流すことにより,培養液が通過する部分を滅菌処理し,極力コンタミが起こらないようにした。このGC繊維電極部分に鉄還元菌の培養液を流し,バイオフィルムの形成を行った。培養液には,電子供与体として乳酸ナトリウムを添加し,作用電極であるGC繊維電極の電極電位を+0.5 V対SSEに保ち,電子受容体とした。培養液を流しはじめた直後は,電流は観測されなかったが,培養液を流し続けると徐々に乳酸の酸化に由来する電流が増加するのが観測された。これは培養液を流すに従って電極表面に鉄還元菌が付着し,付着した微生物が乳酸の酸化で得た電子を電極に渡しているためである。以上の結果から,GC繊維電極上にバイオフィルムが形成されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以前から使用していたカラム電極電解法の作用電極に用いるグラッシーカーボン繊維電極が入手できなくなり,代替品を探すのに時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
はじめに,グラッシーカーボン(GC)電極上に形成されたバイオフィルムの観察を光学顕微鏡,共焦点レーザー顕微鏡,走査型電子顕微鏡などを用いて行い,バイオフィルムの形成の様子を明らかにする。次に,電極電位や培養液の流速などを変化させてバイオフィルムを形成させ,バイオフィルムが電極表面により均一にできる条件をさがす。その後,バイオフィルム修飾GC繊維電極を用いたセレン酸の電解還元実験を行う。電解後のバイオフィルムを顕微鏡観察し,どのような形態でセレンが回収されるかを明らかにする。また,X線吸収微細構造(XAFS)分光法により,回収されたセレンの化学状態の分析を行う。最後に,電解回収の最適条件などを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
GC繊維電極の代替品を探すのに時間がかかり,計画に遅れが生じたため,GC繊維電極上に作製したバイオフィルムの顕微鏡観察を行うことができなかった。これにより,顕微鏡観察に用いる試薬,消耗品などを購入しなかったため未使用額が発生した。次年度は,これらの試薬,消耗品を購入し,顕微鏡観察を行う。その他,微生物培養に必要な消耗品,XAFS分析に必要な消耗品を購入する。また,得られた成果を学会で発表するための旅費として研究費を使用する。
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