本研究では,金属還元能を有する微生物とフロー式電解法を組み合わせたバイオフィルム修飾カラム電極電解法の開発を行った。はじめに,様々な金属イオンを還元することが可能なShewanella putrefaciensの培養液をカラム電極に流し,グラッシーカーボン(GC)繊維電極上にバイオフィルムを作製した。培養液には電子供与体として乳酸ナトリウムを添加し,作用電極であるGC繊維電極の電位を+0.5 V(SSE)に保ち,電子受容体とした。培養液を流してからしばらくすると,徐々に微生物活動に由来する電流の増加がみられ,バイオフィルムの形成が示唆された。GC繊維の一部を取り出し,クリスタルバイオレットで染色した後,顕微鏡で観察したところ,バイオフィルムが観察された。この電極を用いて,亜セレン酸水溶液中におけるサイクリックボルタモグラム(CV)の測定を行った。バイオフィルム中の微生物が触媒として働き,亜セレン酸の触媒還元電流が観測されることを期待したが,触媒電流は観測されなかった。また,亜セレン酸溶液をカラム電極に流しながら電位を掃引させるフロー電解を行ったが,CV同様に,亜セレン酸の還元による触媒電流は観測されなかった。しかし,カラム電極から出てきた亜セレン酸溶液を再びカラム電極へ導入し,循環させたところ,数時間後に溶液中に赤色沈殿が見られるようになった。これは,GC繊維上のバイオフィルムにより亜セレン酸が還元された可能性をしさしており,今後,電極電位などを最適化することにより,迅速な亜セレン酸の還元回収ができる可能性が示された。
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