研究課題/領域番号 |
24760720
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
元川 竜平 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (50414579)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分離化学 |
研究概要 |
ナトリウムイオンやカリウムイオンが共存する水溶液においても、セシウムイオンを選択的に認識することのできるクラウンエーテル化合物の合成を行うと同時に、シリカゲル粒子との複合材料の開発を行った。 クラウンエーテルの環サイズと環内に配置されるベンゼン環の位置を最適化することによって、セシウムイオンがクラウンエーテルの環内に効果的に取り込まれることを見出した。このとき、ベンゼン環とセシウムイオンが特異的な相互作用状態を形成することも明らかになり、セシウムを選択認識するための鍵となる相互作用が関与していることが明らかになった。このクラウンエーテルをシリカゲルやゼオライトの細孔内に分散させた分離試薬を開発したところ、ナトリウムやカリウムと比較して約10倍の分離効果(錯生成定数)を示すことがわかった。さらに、中性子散乱法を用いてこの分離試薬のミクロ構造を分析したところ、クラウンエーテルが細孔内で析出することで3ナノメートル程度のドメインを形成することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クラウンエーテル化合物とセシウムイオンによる特異的な相互作用が明らかになったため、新規なクラウンエーテルの開発に明確な指針が得られている。また、無機系微粒子(シリカゲル、ゼオライト)との複合化による高機能化も成功しているため、この技術を有機系の高分子微粒子へ適応する段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
クラウンエーテル化合物の高度化をすすめることによって、アルカリ金属イオン中におけるセシウムイオンへの選択性がさらに向上した化合物を開発することを目指す。また、シリカゲル粒子の代替物質として有機系の高分子微粒子を用いたクラウンエーテルとの複合材料を開発する。平成24年度までの研究において、シリカゲルとクラウンエーテルによってつくられる複合粒子のミクロ構造が明らかになっているため、これに類似するミクロ構造を有機系の高分子微粒子を利用することで作成することを目指す。このための方法として、中性子散乱法などの分光学的な手法を利用しながら高分子微粒子の表面・内部構造を制御した研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
化学合成実験や分離試験を行うための消耗品、中性子散乱実験用の重水素化溶媒とセルを購入するために80万円を計上している。また、研究成果を発信することを目的とした学会参加や国外において中性子散乱実験を実施するための旅費として30万円を計上している。
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