研究課題/領域番号 |
24760722
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
小野 正雄 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (50370375)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 強い遠心加速度場 / 同位体分離 / 遠心機 |
研究概要 |
本研究では、強い遠心加速度場下のMo 酸塩水溶液中のMo 同位体分離挙動を明らかにすることを目指して研究を進めている。 H24年度は、主に実験環境の構築および最適な分析方法の検討を行った。具体的には、高速回転試験機用磁気軸受け装置一式を購入し、最大5万Gの遠心加速度までのMo 同位体分離挙動を調べる装置を構築した。また、当初計画では同位体組成の分析には誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を利用する予定であったが、水溶液を滴下してMoを吸着させたAl板の表面を2次イオン質量分析器(SIMS)で測定することでも十分評価できる測定精度が得られることが確認できたため、よりマシンタイムを容易に獲得できるSIMSでの測定を採用してより効率的に研究を進めることとした。 実験に関しては、最大遠心加速度5千G、10分間の遠心処理時間での遠心管内での同位体分離挙動について調べた。92Mo/100Moの同位体比で初期状態から約0.1%の変化が生じることが分かった。単体金属の場合は10万G以下での有意な同位体分離は確認できなかったため、水溶液中の溶質が僅かに偏る際に同位体の拡散係数の差で生じる同位体効果(遷移過程)は、ローター設計上はより扱いやすい低い遠心加速度を視野に入れられる可能性が高いことが分かった。H25年度は、構築した遠心機を利用して時間、遠心加速度をパラメーターとした系統的な実験を行い、強い遠心加速度場下のMo 酸塩水溶液中のMo 同位体分離挙動を明らかにすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度は実験環境の整備を行い、時間をパラメーターとして振った実験を行い、同位体分離の分離平衡までの遷移過程を明らかにする計画であった。 実験環境の整備を重点的に行い、実験に着手することを第一目標としていたが、その目標は無事達成した。しかしながら、よりシステマチックに実験を行えるように装置設計を工夫した結果、実験環境整備が予定より4ヶ月遅れたため、時間をパラメーターとして振る実験はH25年度に持ち越した。したがって、「やや遅れている」と判断した。しかしながら、「今後の研究の推進方策等」にて述べる通り、H25年度中に残りのすべての計画を達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
実験環境整備に当初計画以上の時間を要したことでH24年度計画を一部H25年度に持ち越したものの、システマチックに取り扱いやすい実験環境を構築できたこと、および、「研究実績の概要」にて述べた通り、より効率的に研究を進められる分析方法を検討・採用したことで、H25年度中に残りの計画を達成できる見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は効率的かつシステマチックに実験を繰り返してデータを取得する必要がある。H24年度中にシステマチックに取り扱いやすい実験環境を構築できたが、比較的低遠心加速度でも同位体分離挙動が確認できたことから、2万G程度までの遠心加速度を発生できる汎用の遠心機を購入してこれを低い遠心加速度の実験に利用し、整備した実験環境で高い遠心加速度の条件を扱うことでより効率的に実験を行えるように工夫する。 また、溶液の溶質濃度変化を追うことが同位体分離の有無の一つの指標となるため既存の伝導率計を用いて伝導率を測定しているが、精度が不十分(10PPM)であるため、高精度の測定器を購入する。 また、SIMSでは分析に固体状態の試料を用いるため、専用の試料取り付けホルダを準備して取り付けたまま保管しておくことで、再測定時に極めて再現性の高い分析が出来る。したがって、そのための試料ホルダを購入する。
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