研究課題
本研究では、強い遠心加速度場下のMo 酸塩水溶液中のMo 同位体分離挙動を明らかにすることを目指して研究を進めてきた。H24年度は、主に実験環境の構築および最適な分析方法の検討を行った。当初計画では、遠心機の回転停止時に発生する対流により分離された同位体が再度混ざってしまうのを防ぐために、対流が生じにくいキャピラリの使用を予定していたが、汎用の遠沈管の中間に仕切りを設けることで、その仕切りで分けられた2室内でおおむね個別に対流を起こせることが予備実験で確認できたため、この2室の同位体比の差異を調べる方向性で研究を進めた。また、当初計画では同位体組成の分析には誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を利用する予定であったが、水溶液を滴下してMoを吸着させたAl板の表面を2次イオン質量分析器(SIMS)で測定することでも十分評価できる測定精度が得られることが確認できたため、よりマシンタイムを容易に獲得できるSIMSでの測定を採用してより効率的に研究を進めた。H25年度は、最大遠心加速度2.6万Gの条件にて、モリブデン酸カリウム塩水溶液(0.5mol/L)の同位体分離挙動を調べた。同位体分離の初期と十分な時間経過後で同位体分離挙動が真逆になる予備実験結果が得られていたため、少なくとも2つの分離効果が共存していると考えられるが、時間をパラメーターとして振った実験から、上記遠心加速度条件では、1分間以上の遠心処理をすれば後者が支配的となり、9分間以上の処理時間でおおむね平衡に近い条件となることが分かった。そこで、遠心処理時間を9分間に固定して、分離段数を増やした場合の同位体比の変化を調べた。結果として、1段で約1.6%、2段で約1.6%の分離が確認された。以上から、分離段数に比例して分離が進むことが確認された。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan, Topics
巻: Vol. 12, No. ists29, ページ: Tq_1 - Tq_3