本研究の全体構想及び目的は、ビームの加速・集束を同時に行う加速レンズにおいて、レンズ前後のビームのエネルギー比(加速比)を一定にすることで、加工試料上でビーム進行方向(縦方向)に対してビーム集束点を保持したままプロトンマイクロビームのエネルギーを連続的に変化させることが可能な3次元微細加工用MeV級小型マイクロビーム装置を実現することである。昨年度までにビーム径20μm程度の条件下で加速比一定の時に集束点がずれないことを確認した。 研究実施計画は、縦方向及びその垂直方向(横方向)の空間分解能が1μm程度の3次元描画技術を開発することである。まず、ビーム引出部の改良によりビーム径5μm程度への縮小化に成功した。次に、このビームを用いた加速比と集束点の位置の関係を実験で測定した。その結果、放電を避けて安定に運用できる100keVから140keVのエネルギー範囲において、加速比が一定の場合に集束点及びビーム径が保持されることが確認できた。次に、本研究が目指すMeV級プロトンマイクロビームによる加工を想定して、イオン光学シミュレーションにより100keVから1MeVのエネルギー範囲における加速比と集束点の関係を計算した。その結果、100keVから140keVでは加速比と集束点の関係が実験結果とほぼ一致し、さらに1MeVに至るまでどのエネルギーにおいても加速比が同じであればビーム集束点がずれないことがわかった。本装置を加工に応用する際の空間分解能について、縦方向はビームのエネルギーを変化させることにより1μm程度の空間分解能が得られる一方、横方向はビーム径と同程度の5μm程度に留まった。しかし、今後ビーム引出部の更なる改良によりビーム径1μmを達成することが十分に可能である。以上、プロトンマイクロビームのエネルギーを連続的に変化させる3次元微細加工技術を開発し、その実現見通しを得た。
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