研究課題/領域番号 |
24760725
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
前山 拓哉 独立行政法人理化学研究所, 運転技術チーム, 特別研究員 (70612125)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 重粒子線治療 / ゲル線量計 / 三次元線量分布 / MRI / 放射線化学 / LET効果 / ナノコンポジットゲル / 水溶液線量計 |
研究概要 |
本年度はナノクレイ、ゼラチン、ニクロム酸水溶液線量計からなるナノコンポジットニクロム酸ゲル線量計(NC-DCG)の重粒子線に対する(1)特性評価並びに、(2)反応メカニズムについて検討した。(3) 上記、研究から、ナノコンポジットゲル線量計の改良を行い、重粒子線用ゲル線量計の開発において重要なLET効果のない優れた特性が予備的実験結果から得られている。 (1)開発したNC-DCGは重粒子線照射後から5日後のMRI測定でも同様の三次元分布を得ることができ、従来の水溶液線量計をベースとしたゲル線量計の課題であった照射後の生成物の拡散の完全な抑制ができ、高い安定性を持った新規のゲル線量計の開発に成功した。このゲル線量計は酸素の影響を受けない特長を有するため、ポリマーゲル線量計で使用される脱酸素剤やゲル線量計の調製・封入容器を容易に行うことができる。一方、放射線の線質により線量応答性(感度)が異なる所謂LET効果は既存のゲル線量計と同じように見られることが明らかとなり、このメカニズムについて追究を行った。 (2)水溶液のニクロム酸線量計においてLET効果がほとんどないことが既往の研究から推測され、1cm角ボクセル容器に定量いれたニクロム酸水溶液に重粒子線を照射し、その後のMRI分析から実験的にLET効果が少ないことを確認した。その後、ゼラチンを加えた系では、LET効果が顕著になることが確認され、ゲル化させることでその放射線誘起還元反応過程が変化し、LET効果が現れると考えられた。 (3)二クロム酸の研究をもとに、ナノコンポジットゲル線量計の改良を試みたところLET効果が改良された様子がみられており、より詳細な追究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
重粒子線用の線量計として、重粒子線のLET増加による感度の低下(LET効果)はゲル線量計にとどまらず、その他のフィルム、シンチレータ、TLD、ガラス線量計などにも見られる。このLET効果は様々なエネルギーの重粒子線が含まれる照射条件での正確な線量、例えばがん治療で用いられる入射粒子のエネルギーに分布を持たせた照射方法(SOBP:拡大ブラッグピーク)の線量評価を困難にしていた。本研究により開発をすすめている重粒子線用ゲル線量計は期待以上にLET効果が改善された優れた性質が得られており、特許出願を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
開発したゲル線量計を用いた線量計算コードの検証実験を進める。一方で、大量生産化による高品質なゲル線量計の調製方法の確立や普及も視野に入れた研究も平行して進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文投稿が遅れていることで次年度使用額(H25年度への繰越額)は35,882円となっている。現在、複数の論文を投稿準備しており、H25年度は繰越額を用い、複数の論文投稿を行う。その他は予定どおりに研究費を使用する。
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