研究課題
重粒子線はX線やγ線と異なり、止まる直前に高い線量を与えるため、線量分布にピークを持つ。このピークをがん患部に重ね合わせることで、従来の放射線がん治療よりもよりピンポイントな治療を可能とする。この線量のピークはLET(線エネルギー付与)の増加により生じるが、これまでの固体・ゲル状の線量計ではLETの増加により検出器の感度が低下し、実測値から単純に吸収線量を評価することができなかった。本研究課題では三次元ゲル線量計においてLET依存性の抑制を行うことを目的とし、新規のゲル線量計の開発を進めた。開発するゲル線量計はクレイの吸着機能により高位置分解能が期待されるナノサイズのクレイ、ゼラチンなどのゲル化剤、水溶液線量計により調製される新規のゲルである。1.放射線の線質を表すLETの増加に従う感度の低下がないニクロム酸水溶液線量計をゲル化させることによる作られる線量計の特性評価ではナノクレイ添加ゲル中では水溶液中の反応メカニズムと異なり、LET増加により感度低下が生じることを明らかにした。2.フリッケ水溶液線量計はLET増加に従い感度が低下するが、脱気したナノクレイ添加ゲル中では反応メカニズムの変化し、感度低下が抑制されることを発見した。従来、上述の水溶液線量計を基にしたゲル線量計の開発は、照射直後から進行する生成物の拡散が問題であり、粒子線を用いた詳細な特性評価が困難であった。一方、本課題ではナノクレイを少量添加することで生成物の拡散の抑制に成功し、先駆的に研究を進めることができ、最終的に重粒子線に適した三次元ゲル線量計の開発に成功した。今後は開発したゲル線量計のより詳細なメカニズム解明のための追究を進める。
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Radiation Physics and Chemistry
巻: 107 ページ: 7-11
DOI:10.1016/j.radphyschem.2014.09.001
放射線化学
巻: 98 ページ: 11-15