液体アンモニア電気分解時の電流-電圧特性を基礎的な観点から明らかにし、適切な電極材料、電極形状を検討して、エネルギー変換効率の高い電気分解セルの構築を目的とする。 電極の反応面積の増加による過電圧の低減効果を評価するため、電気めっき法でPt板にPt粒子を堆積させ、白金黒電極を作製した。電流密度-電圧曲線からPt粒子の堆積重量増加に伴い、0.5 V付近での電流密度の増加が見られた。最も堆積重量の多い白金黒電極では、Pt板と比較すると分解開始電圧値が1.1 Vから0.45 Vまで低減した。白金黒電極の電極面積はPt粒子の堆積重量が増加しても一定になると評価されたことから、Pt粒子の堆積層が厚くなることにより過電圧が低減することが明らかになった。 電極反応過電圧を評価するために、アノード、カソードそれぞれの電極反応の過電圧特性を調べた。Pt線を疑似参照電極として用いることで、両過電圧の比を評価することに成功した。その結果、Pt板電極を用いた場合にアノード過電圧は、カソードの5倍であることが確認され、N2放出反応がより大きな過電圧を持つことが分かった。電極材料の検討を行うために、3d、4d、5d遷移金属の板電極と電気めっき法により作製したRu、Pt-Ru電極を用いた際の各過電圧に対する影響を評価した。両電極反応の過電圧低減に効果があった触媒の活性は「Pt-Ru = Ru > Ni >> Pt」であり,Ruが高い触媒活性を持つことが明らかになった。特にPt-Ru電極は、アノード反応の過電圧を大幅に低減させPt板と比べて0.84V低下した。Pt-Ru電極を用いた0.1 Vでの定電圧測定では、水素と窒素の生成が確認され、理論分解電圧付近での液体アンモニア電気分解反応が示された。
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