研究課題/領域番号 |
24760729
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 義和 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00335704)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 多国籍 |
研究概要 |
近年、欧州諸国の自然エネルギー利用発電技術への関心・期待は非常に高く、政府主導の下、積極的な施策がなされている。そこで、本研究課題では、日本沿岸に到来している平均7 kW/m の波エネルギーにより発電し、かつ人工藻場としても活用できる、環境と調和する柔軟発電体を用いた海床設置型波エネルギー発電装置の提案ならび研究開発を行う。 本研究の研究計画は平成24年度から平成25年度の2年間である。平成24年度では項目1:高出力の柔軟発電体の開発とその理論設計計算手法の開発、項目2:小型造波水槽を用いた発電実験、を計画している。平成25年度では、項目3:大型造波水槽を用いた発電実験、項目4:広島大学竹原ステーション沿岸での小規模現地発電試験、項目5:研究の総括、を計画している。 平成24年度では、研究計画に基づき、項目1:高出力の柔軟発電体の開発とその理論設計計算手法の開発、項目2:小型造波水槽を用いた発電実験、を実施した。項目1に関しては、はり理論に基づき、柔軟発電体の理論解析方法を開発した。また、柔軟素材(シリコンゴムなど)と圧電フィルムで構成される柔軟発電体が、はり理論で評価できる設計条件についても明らかにした。項目2に関しては、さまざまな板厚さ、幅、長さの柔軟発電体を製作し、小型造波水槽を用いて波浪中での発電能力について検討を行った。その結果、構造様式(圧電フィルムの厚さ、柔軟発電体の厚さ)を改良することで発電性能が向上すること(平成23年度以前の柔軟発電体よりも発電性能が2倍程度)、柔軟発電体の本数を増加させることで構造物の発電能力が向上すること、波に対して柔軟発電体を水平に設置した場合が概ね発電能力が高いこと、が確認された。 以上の成果として、査読付き英語論文2編、査読付き日本語論文1編、査読付き国際会議プロシーディング2編、査読無し国内講演論文3編、であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、研究計画に基づき、項目1:高出力の柔軟発電体の開発とその理論設計計算手法の開発、項目2:小型造波水槽を用いた発電実験、を実施した。 項目1に関しては、はり理論に基づき、柔軟発電体の理論解析方法を開発した。開発した方法は、はりの振動理論と圧電方程式を基礎方程式とし、それらを連成させた解析方法である。その妥当性を検証するために、長さと厚さを変えた柔軟発電体を13パターンほど試作し、大気中での強制振動実験を行った。実験結果と理論解析結果を比較し、構築した手法で、柔軟発電体の振動特性および発電特性を解析できることを確認した。また、柔軟素材(シリコンゴムなど)と圧電フィルムで構成される柔軟発電体が、はり理論で評価できる設計条件についても明らかにした。 項目2に関しては、さまざまな板厚さ、幅、長さの柔軟発電体(全17パターン)を製作し、小型造波水槽を用いて波浪中での発電能力について検討を行った。底から水面方向に向けて、垂直に柔軟発電体を設置した構造物を試作し実験を行った結果、発電能力は柔軟発電体の本数を多くすると向上することが確認された(平成23年度以前における代表者の試作構造物に対して2倍程度であることを確認)。また、構造物内における柔軟発電体の設置位置について検討した結果、場所による差異はあまりないことが確認された。柔軟発電体の設置様式を変えた実験も行った結果、波に対して、柔軟発電体を水平に設置した場合が、概ね発電能力が高いことが確認された。また、現地実験に向けての準備も進めている。 研究期間が平成24年度から平成25年度であることを考慮して、現在までの達成度を自己評価すると、60%と自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果と研究計画に基づき、研究を進展させる。研究計画では、平成25年度の研究項目は、項目3:大型造波水槽を用いた発電実験、項目4:広島大学竹原ステーション沿岸での小規模現地発電試験、項目5:研究の総括、である。 項目3では、広島大学が現有している大型造波水槽を用いた発電実験を行う。平成24年度の成果に基づき、スケールを大きく(2~4倍、長さ・高さ最大2m程度)した発電装置を試作し、大型造波水槽(広島大学所有)で発電実験を行う。柔軟発電体のスケール比、発電装置のスケール比を変えて実験データを収集し、整理することで、柔軟発電体のスケール則、発電装置のスケール則を導き、実スケールでの本発電装置の発電量評価方法を確立する。また、平成24年度に開発した理論解析方法の改良も合わせて実施する。 項目4では、主に広島大学竹原ステーション(広島県竹原市)の岸壁付近に本発電装置を設置し、現地の波エネルギーを用いた小規模現地発電試験および集魚実験を3カ月程度行い、評価する。なお、魚の活動時期を考慮し、春~夏の間に実施する。 項目5では、項目1~4の成果を取りまとめ、外部に公表するとともに、本研究のさらなる進展に資する研究課題の精査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、これまでの研究成果に基づき、基礎的な実験を深化させつつ、現地実験を実施する。現地実験を実施するためにはさまざまな消耗品および人的労力を必要とする。また、実験装置の製作->実験->検討->改良->製作のサイクルを2回程度繰り返すことを想定しているため、全予算のうち70%程度を物品費と謝金とする。残りの30%程度をこれまでの研究成果をエネルギーハーベスティングに関連する国内会議および国際会議で発表するために使用する。
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