研究課題/領域番号 |
24760730
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神名 麻智 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10619365)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
リグノセルロース系バイオマスのひとつであるユーカリをバッチ式オートクレーブリアクターで水熱前処理をし、それによって生成する各種発酵阻害物質量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、定量した。 発酵阻害物質はフルフラール、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)、酢酸を定量し、その生成量は水熱前処理の反応温度によって異なることが明らかになった。 次に、それぞれの代表的な阻害物質である、フルフラール、5-HMF、酢酸、ギ酸を加えて、発酵および増殖を測定した。発酵はグルコースの消費およびエタノールの生産を定量し、増殖は菌体濃度を測定することにより阻害影響を解析した。その結果、それぞれの発酵阻害物質の濃度に依存して発酵および増殖が抑制され、その抑制濃度は発酵阻害物質の種類によって異なることがわかった。 さらに、阻害物質のひとつである酢酸において、増殖で阻害影響をあらわした濃度では、発酵には影響を及ぼさないことも明らかになった。 また、これらの増殖および発酵に対する阻害影響を定性的に解析することに加えて、得られた増殖およびエタノール生成曲線を定量的に解析することにより、阻害影響をパラメータとして数値で表すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、バイオマスはユーカリを用い、前処理はバッチ式オートクレーブリアクターを用いた水熱前処理を行った。反応温度を140度から260度まで変化させ、各種発酵阻害物質の生成量を定量した。発酵阻害物質はフルフラール、5-HMF、酢酸を高速液体クロマトグラフィーによって測定し定量した。ユーカリの水熱前処理によって生成する発酵阻害物質は反応温度によって生成量が異なった。 また、発酵阻害物質の酵母増殖および発酵におよぼす影響を細胞濃度およびグルコース消費量、エタノール生成量をそれぞれ定量することによって解析した。その結果、発酵阻害物質の増殖および発酵に対する影響は発酵阻害物質の濃度依存であることを確認した。前処理から生成する発酵阻害物質量を定量し、さらに、発酵阻害物質の増殖と発酵におよぼす影響を定量的、定性的に解析することができたため、当初の計画の発酵阻害物質耐性酵母作出へ進むための重要な知見をえることができた。これらの結果から本計画は順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は発酵阻害物質耐性酵母の作成に向けて、まず、実際の水熱前処理物から生成する発酵阻害物質の定量を行った。平成25年度は平成24年度に得られた知見を用いて、水熱前処理から生成する発酵阻害物質存在下において耐性を示す酵母の作成を行う。すでに報告されている単一の発酵阻害物質存在下で遺伝子発現が変化する遺伝子群を用い、本計画で定量した種々の発酵阻害物質の複合的な影響においての遺伝子変化を解析する。得られた知見から、複合的な発酵阻害物質存在下で、より耐性に関与する遺伝子をピックアップする。 また、本計画で行われた発酵阻害物質の発酵および増殖に対する定量的な解析と照らし合わせて、より重要となる遺伝子を探索し、発酵阻害物質耐性酵母の作出を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は発酵阻害物質耐性酵母を作出するために、遺伝子組換えを含む分子生物学的な手法を行う。特に遺伝子組換えのために必要な制限酵素、遺伝子をつなげるライゲーション酵素等の消耗品が必要であると考えられる。 また、遺伝子を大腸菌にクローニングするために、ヒートショック法を用いるため、ヒートブロックが必要である。
|