研究実績の概要 |
木質バイオマスからのエタノール生産は,主に前処理,糖化,発酵というステップを通りエタノールを生産する.前処理の中でも水熱前処理は廃液処理を必要としない方法であり,またこの前処理行うことによってセルロース成分が酵素によってより加水分解されやすくなるという利点が挙げられる.しかしながら前処理は後の発酵を行う酵母に阻害的な影響を及ぼす発酵阻害物質が生成することが知られている.そこで,酵母の発酵阻害物質耐性のメカニズムを解明するために,まず,水熱前処理を行うことによってバイオマスから生成する発酵阻害物質を定量をした.具体的には,発酵阻害物質である,フルフラール,5-HMF,酢酸,ギ酸の前処理バイオマス溶液中での濃度を液体クロマトグラフィーで定量した. さらに,それら種々の発酵阻害物質の単一での発酵および増殖へ及ぼす影響を確認した.その結果,フルフラール,5-HMF, ギ酸は,発酵,増殖ともに,発酵阻害物質の濃度に依存して阻害影響を及ぼし,発酵・増殖共に同程度の濃度で阻害影響を示すことが明らかになった.しかしながら,酢酸の発酵・増殖における阻害影響を調べたところ,増殖で阻害が起こる濃度で,発酵に対しては影響を及ぼさないことが明らかになった. また,それらの阻害影響を定量的に示すために,微生物増殖の式であるMonod式を増殖曲線にフィッティングさせることにより,それぞれの発酵阻害物質の酵母増殖への影響を定量的に表すことに成功した.
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