金属空気電池は、電池系外の空気中の酸素を正極活物質とするため、高い理論エネルギー密度と低環境負荷を特徴とする次世代クリーンエネルギー源の一つである。しかし、電池に酸素を取り込むための空気極(電極触媒を担持したカーボンで構成される)においては、現状では浸漬電位が理論値より0.2 V近く卑であり、また、大きな過電圧が生じるために、電池出力にロスが生じることが課題である。そこで本研究では、電極触媒としてLa-Mn系ペロブスカイト型酸化物に着目し、浸漬電位(=無電流における電位)が理論値に限りなく近く、過電圧が従来よりも格段に小さな空気極を構築することを目的とした。 本年度においてはまず、合成したペロブスカイト型酸化物ナノ粒子(La1-xCaxMn0.9Fe0.1ナノ粒子)における、組成の最適化について検討を行った。検討の結果、x=0.6において最も酸素還元活性が高い触媒が得られた。これは、x=0.6において、Mnの価数が酸素還元活性の発現に最も良好な状態に最適化されたためであると考えられる。また、La1-xCaxMn0.9Fe0.1ナノ粒子の表面をX線光電子分光で分析した結果、La1-xCaxMn0.9Fe0.1ナノ粒子の表面にはAサイト(LaおよびCaサイト)が欠損した相が生じており、Aサイトの欠損により生じるMn価数の上昇が、高い酸素還元活性の発現に寄与していることが示唆された。 また、La-Mn系ペロブスカイト型酸化物触媒に3wt%程度の白金を添加した結果、28wt%の白金を用いた空気極とほぼ同程度の酸素還元活性を示した。このことから、ごく微量の白金とLa-Mn系ペロブスカイト型酸化物を複合化させることで、白金の使用量を削減しつつ白金触媒と同レベルの酸素還元活性を有する酸素還元触媒を構築できることが明らかとなった。
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