研究概要 |
本研究では未解明であるREBa2Cu3Oy(REBCO)酸化物超伝導線材における縦磁界中における臨界電流について、磁束の運動を抑制する次元性の異なる人工欠陥導入線材を創製し、縦磁界中高臨界電流を向上させ、直流大容量ケーブル応用へと展開するための研究基盤を確立することを目的とした。以下に期間中に行った研究内容について記す。 目的(a) 縦磁界用人工欠陥導入REBCO線材の創製 ① 金属有機酸塩塗布(MOD)法を用い、水蒸気分圧、流速を変化させREBCO相の成長速度を制御し、ab面方向の1次元欠陥であるY2Cu4O8を導入した。② MOD法を用い3次元欠陥として、ナノ粒子状のBaMO3のMをZr, Sn, Nb等の異なる元素で置き換えることでサイズを制御した3次元欠陥導入線材の創製を行った。 目的(b) 人工欠陥が縦磁場中Ic及び磁束運動に及ぼす影響 ① 目的(a)①~②で創製したそれぞれの次元性、サイズ、密度の異なる人工欠陥導入線材の横磁界中での臨界電流密度(Jc)を評価し、磁束ピン止め点としての有効性を確認した。② 目的(a)①で作製した線材の縦磁場中Jcと横磁場中Jcを比較することでMOD法により作製したREBCO線材として初めて縦磁界効果を確認した。③人工欠陥の有無で縦磁界特性が異なることを確認した。今度は、その形状、密度等の影響を更に詳細に調べることにより更なる特性向上が期待される。④縦磁界効果を示した線材の磁場中特性を用いて縦磁界利用ケーブルの可能性についても検討を行った。今後、太陽光発電、風力発電やEVなど普及に伴いニーズの高まる直流送電に、本研究で得られた成果をさらに研究開発することにより縦磁界効果を利用したREBCO超伝導ケーブルが利用させることが期待される。
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