研究課題/領域番号 |
24770014
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森長 真一 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (80568262)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 時空間変動 / シロイヌナズナ近縁種 / 適応 / 個体群動態 / ゲノム / 標本 |
研究概要 |
シロイヌナズナ属野生植物のハクサンハタザオ・イブキハタザオを対象に、現生個体と博物館由来の標本個体のゲノム比較から、時空間変動遺伝子を網羅的に解析することを試みた。 まずはじめに、次世代シーケンサーilluminaの複数のライブラリーと同じく次世代シーケンサー454を用いて、現生一個体についてのゲノム配列解析をおこない、denovoアセンブル解析によってリファレンスゲノムを作成した。そして、滋賀県伊吹山内のハクサンハタザオ・イブキハタザオを対象に、現生個体と標本個体の葉片からDNAを抽出し、次世代シーケンサーilluminaを用いておよそ80個体のゲノムリシーケンスをおこなった。その後、解読した配列断片をリファレンスゲノムにマッピングすることにより一塩基多型(SNP)を検出し、全SNPの対立遺伝子頻度の時間的変化を解析した。 その結果、全SNPを用いて推定した過去110年の間の遺伝的多様性はハクサンハタザオ・イブキハタザオにおいて共に大きく変動していない事が分かった。これは両系統の110年間の進化過程において、ボトルネックなどの個体群動態の影響は少ない事を示唆している。そこで、個々のSNPについて対立遺伝子頻度の変化量を網羅的に解析したところ、複数のSNPにおいて対立遺伝子頻度が過去110年の間に大きく変化しており、その中のいくつかは連鎖不平衡がゲノム全体に比べて長くなっていることが明らかとなった。これらのSNP近傍には、過去110年間の環境変動によって自然選択を受けた適応候補遺伝子が存在すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標本個体のゲノム解析も問題なくおこなうことができ、現生個体と標本個体のゲノム解析を遂行した。さらに対立遺伝子頻度の時間的変化の解析方法を確立し、過去110年間の進化的変化を解析する事に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
解析集団数と解析個体数を増やすことにより、より精度高く時空間変動遺伝子を探索する。また複数集団間で過去から現在に至る進化過程を比較することにより、進化的応答の違いをもたらす環境要因を推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
解析集団数と解析個体数を増やす必要があるため、野外調査旅費やゲノム解析試薬費が必要となる。採取した植物を栽培するたの栽培用品一式が必要である。また、集団比較のための解析に必要な書籍やソフトウェアやコンピューターが必要である。
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