研究課題/領域番号 |
24770014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森長 真一 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (80568262)
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キーワード | 時空間変動 / シロイヌナズナ近縁種 / 適応 / ゲノム / 標本 |
研究概要 |
シロイヌナズナ属野生植物のハクサンハタザオ・イブキハタザオを対象に、現生個体と博物館由来の標本個体のゲノム比較から、時空間変動遺伝子を網羅的に解析することを試みた。 昨年度までに解析を行なった滋賀県伊吹山内のハクサンハタザオ・イブキハタザオに加えて、三重県藤原岳のハクサンハタザオ・イブキハタザオを対象におよそ60個体のゲノム解析をおこなった。現生個体と標本個体の葉片からDNAを抽出し、次世代シーケンサーilluminaを用いてリシーケンスをおこない、構築済みのリファレンスゲノムにマッピングすることにより一塩基多型(SNP)を検出し、全SNPの対立遺伝子頻度の時間的変化を解析した。 各地点の全SNPを対象に、それぞれの個体のヘテロ接合度の平均値を計算し、遺伝的多様度の時間的変化を調べた。その結果、いずれの地点においても過去約100~50年間で遺伝的多様度に大きな変化はみられず、ボトルネックなどを受けることはなく多様性が保持され続けていることが分かった。 個々のSNPにおける対立遺伝子頻度の時間的変化について各地点で解析した結果、大半のSNPは過去約100~50年間で大きな変化はみられなかった。しかし、一部のSNPでは対立遺伝子頻度が大きく変化していることが分かった。そこで、年代とともに対立遺伝子頻度が大きく変化し、かつ染色体上において数千bpに渡ってその傾向が継続する領域、すなわち過去約100~50年間で自然選択がはたらいた可能性のある領域を探索した。その結果、それぞれの地点においてごく少数のゲノム領域において自然選択がはたらいた可能性があることが分かった。これらの領域には、近縁種のモデル植物シロイヌナズナにおいて遺伝子機能の詳細が調べられている遺伝子、機能が未知の遺伝子、タンパク質をコードしない非コード領域など様々な配列が含まれていることが分かった。 次年度以降はさらに集団数を増やし、集団間の比較解析を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は伊吹山集団だけであったが、今年度はさらに藤原岳集団を追加した。昨年度と同様に、標本個体のゲノム解析も問題なくおこなうことができ、確立した対立遺伝子頻度の時間的変化の解析法を適用することにより時空間変動遺伝子を探索することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
さらに、解析集団数と解析個体数を増やすことにより、時空間変動遺伝子を集団間で比較する。また環境変化と進化的応答の関連性についても考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
天候などにより予定していた野外調査を一部中止したため。 ゲノムデータ解析用の消耗品等に使用する。
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