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2012 年度 実施状況報告書

群集としての協調代謝を明らかにするための土壌細菌群集解析

研究課題

研究課題/領域番号 24770015
研究種目

若手研究(B)

研究機関東京工業大学

研究代表者

森 宙史  東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (40610837)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード細菌群集 / メタゲノム / 生態 / 代謝
研究概要

細菌は環境中で群集を形成し、個体間・種間で相互作用しながら生息している。しかしながら、環境中の細菌の多くは培養困難であるため、細菌間の相互作用の詳細はほとんどわかっていない。本研究では、芳香族を添加した土壌由来の細菌群集から時系列でDNA・RNAのサンプリングを行い、メタゲノム・メタトランスクリプトーム解析を行うことによって、細菌が化合物を代謝する過程で生じた中間代謝産物の一部を、他の種の細菌が取り込み利用する協調代謝について、その種間相互作用の詳細を解明することを目的としている。平成24年度は、実験的なバイアスの少ないメタトランスクリプトーム解析を行うために、土壌からのRNA抽出法の検討と、rRNAの実験的フィルタリング手法の検討を行った。土壌中には、様々な夾雑物が存在するためバイアスの少ないDNA・RNA抽出法を慎重に検討する必要があり、現在Earth Microbiome Project等の国際的な大規模プロジェクトにおいて、標準となるDNA・RNA抽出法が検討されている。それらのプロジェクトでの検討結果を参考にして、出来るだけバイアスの少ないDNA・RNA抽出法の選定を行った。また、抽出出来たRNAの約70-90%を占めるrRNAについては、シーケンスの前に実験的にフィルタリングする手法が広く用いられているが、rRNAと共にmRNAの一部も除去され、mRNAの組成にバイアスを与える危険性が高いことがわかったため、本研究では実験的なフィルタリングは行わず、当初の計画よりも大量にシーケンスすることで、残りの10-30%のmRNAからでも十分な本数のシーケンスを確保する戦略に変更した。現在、芳香族化合物を添加した土壌の時系列でのDNA・RNAのサンプリングを行っており、サンプリングが完了し次第、シーケンスを行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験的なバイアスの少ないメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析を行うために、土壌からのDNA・RNA抽出法の検討に時間をかけたため、土壌にフェナントレンを添加し、細菌群集から時系列でDNA・RNAのサンプリングを行う実験は、24年度には取りかかれなかった。DNA・RNA抽出法の検討は完了したが、実際のサンプリングは24年度中に出来なかったため、目的の達成度は、やや遅れているとした。

今後の研究の推進方策

フェナントレン添加後の土壌について、時系列でDNA・RNAのサンプリングを行い、メタゲノム・メタトランスクリプトーム解析を行う。シーケンス後、データベースへの配列相同性検索を用いて各配列の系統および遺伝子機能を推定し、フェナントレン代謝関連の遺伝子や、その他の遺伝子が時系列でどのような変動パターンを示すのかを明らかにする。さらに、配列ごとの系統推定と遺伝子機能推定の結果を組み合わせ、群集中において代謝経路中のどの機能遺伝子が、どの系統に主に担われているのかを、メタゲノム解析の結果とメタトランスクリプトーム解析の結果の両方で、それぞれ推定する。メタゲノム解析とメタトランスクリプトーム解析の両結果を用いることによって、群集中の遺伝的ポテンシャル、群集中で主にActiveな系統、群集中のあるタイムポイントで各代謝経路を担う系統、の3つの情報が得られると期待出来る。これらの情報から、フェナントレン代謝過程における複数の細菌間の協調代謝の有無を明らかにし、群集中における化合物を介した細菌間の相互作用の詳細を明らかに出来ると考えている。

次年度の研究費の使用計画

H24年度は土壌からのDNA・RNA抽出法の検討とrRNAの実験的なフィルタリングの有無の検討のための情報収集を主に行い、手法の比較のために必要な実験試薬も業者からの試供品を用いたため、当初予定していた実験で用いる試薬代等の支出はH24年度は無く、そのためH24年度分の研究費に残額が発生した。
H25年度はH24年度に確立した実験手法を基に、土壌からのDNA・RNA抽出を行うためのキットや試薬、新型シーケンサーを用いたメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析のためのシーケンス試薬の購入を行う。特に、シーケンス試薬については、rRNAの実験的なフィルタリングを行わない手法でメタトランスクリプトーム解析を行う際には、低コストで多くのリードをシーケンスする必要があり、各シーケンサー機種の性能向上に伴うリード長の伸長やリード数の増加、必要なDNA量の少量化が日進月歩であるため、用いるシーケンサーの選択は各シーケンサーの最新の性能について常に情報を集め、その時点で最適なシーケンサーを選択し、そのシーケンサーに必要なシーケンス試薬を購入する予定である。H24年度分の研究費の残額は、少しでも多くのリードをシーケンスするために、主にシーケンス試薬の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Meeting Report: Hackathon-Workshop on Darwin Core and MIxS Standards Alignment (February 2012).2012

    • 著者名/発表者名
      Tuama, EO., et al.
    • 雑誌名

      Stand Genomic Sci.

      巻: 7 ページ: 166-170

    • DOI

      10.4056/sigs.3166513

    • 査読あり
  • [雑誌論文] メタゲノム解析の現状と将来 知識データベースの開発2012

    • 著者名/発表者名
      森宙史, 他
    • 雑誌名

      情報管理

      巻: 55 ページ: 167-175

    • DOI

      10.1241/johokanri.55.167

    • 査読あり
  • [学会発表] 微生物の生息環境データの記述および高度な検索のためのオントロジー構築

    • 著者名/発表者名
      森宙史, 他
    • 学会等名
      トーゴーの日シンポジウム2012
    • 発表場所
      時事通信ホール, 東京
  • [学会発表] メタゲノム解析を用いた細菌群集動態の解明

    • 著者名/発表者名
      森宙史
    • 学会等名
      第195回信州大学理学部生物科教室セミナー
    • 発表場所
      信州大学松本キャンパス, 長野
    • 招待講演
  • [学会発表] 微生物統合データベース MicrobeDB.jp

    • 著者名/発表者名
      森宙史, 他
    • 学会等名
      第7回日本ゲノム微生物学会年会
    • 発表場所
      長浜バイオ大学, 滋賀

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公開日: 2014-07-24  

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