密接な共生関係を保ちながら多様化を遂げたコミカンソウ科植物と,その送粉者であるハナホソガ属ガ類を用い,植物の多様化過程における送粉者の役割を分析した。ニューカレドニアのコミカンソウ属とハナホソガ属では,相互作用をもつ植物と送粉者の分布はほとんどの場合一致せず,送粉者は植物の種分化を直接引き起こしてはいないことが示唆された。また,奄美大島に生育する4種のカンコノキ属植物は,送粉者が種特異性であることによって共存が可能になっていた。植物の多様化における送粉者の役割は,種分化を直接引き起こすことではなく,すでに種が分かれている植物の共存を促すことで,環境収容力を高めることであるという考えを提唱した。
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