研究課題/領域番号 |
24770021
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮崎 祐子 岡山大学, その他の研究科, 助教 (20443583)
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キーワード | トランスクリプトーム解析 / 遺伝子発現解析 / マスティング / 加温実験 / コナラ属 |
研究概要 |
平成25年度は、平成24年度に行った網羅的遺伝子発現解析の結果をもとに、加温処理で変化すると考えられた花成制御遺伝子の発現解析を行った。 加温実験は北海道大学苫小牧研究林および鳥取大学教育研究林蒜山の森に生育するコナラ成木3個体ずつを用いて、それぞれにOpen Top Canopy Chamber(OTCC)を設置することで行った。OTCC内部(加温処理)と同個体のOTCC外部(コントロール)からそれぞれ芽と雌花を2013 年6月~9月(苫小牧)5月~7月(蒜山)に採取し、遺伝子発現解析試料とした。芽と雌花からRNAを抽出し、シロイヌナズナにおいて花成経路統合遺伝子とされるSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS 1(SOC1)および花芽分裂組織決定遺伝子のSEPALLATA 3 (SEP3)の相同遺伝子(それぞれQsSOC1およびQsSEP3とする)について、リアルタイムPCR法によって遺伝子発現解析を行った。 QsSOC1は芽で発現が確認され、一方で雌花では早期(苫小牧6月、蒜山5月)を除いて殆ど発現がみられなかった。鳥取大学構内で生育するコナラの花芽は雄花が6月下旬~8月下旬、雌花が8上旬に原基分化することが分かっており(橋詰 2003)、これより分化時期が遅れると考えられる苫小牧においては、QsSOC1の発現は6月に最も発現量が高く、それ以降は発現量は低く推移した。 QsSEP3は芽よりも雌花でより高く発現していた。蒜山のコントロール区ではQsSEP3発現量は6月から7月にかけて低かったが、温暖化処理区では処理効果の大きかった3個体中2個体において6月から7月にかけて高くなっていた。 以上の結果および他の候補遺伝子の発現解析から、温度上昇がコナラ属の花芽形成から種子成熟までに与える影響について考察する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
候補遺伝子の発現解析を2つの候補遺伝子について行った。また、養分操作実験として窒素施肥実験を実施し、繁殖量の変化を把握するためのサンプルを採取し、分析を行っている。以上のことから、達成度は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
解析を行う候補遺伝子をさらに単離し、解析を行う。また、窒素施肥実験で採取したサンプルの分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
窒素施肥実験で採取したサンプル測定にかかる費用が予定額よりも抑えられたため。 物品費として主に、リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析のための試薬や消耗品、養分量操作実験個体調査用の道具類および分析にかかる消耗品類が挙げられる。また、旅費として、成果の学会発表のための旅費が挙げられる。役務費として成果の国際誌への発表のための英文校閲費が挙げられる。
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