研究課題/領域番号 |
24770023
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
加藤 元海 高知大学, 教育研究部総合科学系, 助教 (60403854)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レジームシフト / 生態系 / 湖沼 / 一次生産 |
研究概要 |
申請者はこれまでの研究から、湖沼においてレジームシフトが起こると生態系機能の一つである一次生産が大きく変化することを明らかにしたが、本年度は、湖沼全体の一次生産量を理論的に推定する方法の開発を行なった。植物プランクトンの増殖は光と栄養塩に依存していることから、一次生産もこれら両要因に依存する。湖沼全体の一次生産を見積もるには、光環境に基づいた算出法と、栄養塩環境に基づいた算出法の2つの方法がある。光環境に基づいた方法は植物プランクトンの光強度-光合成曲線のモデルを用い、栄養塩環境に基づいた方法は植物プランクトンの個体群動態のモデルを用いて推定を行なう。 光環境に基づいた方法では、植物プランクトンの密度、水深に伴う光の減衰曲線、光強度-光合成曲線を組み合わせて一次生産の算出を行なった。栄養塩環境に基づいた方法では、植物プランクトンの増殖(栄養塩を吸収して細胞分裂)と消失(動物プランクトンによる摂食、湖底への沈降、河川などからの流出)を組み込んだ個体群動態の数理モデルを基に一次生産の算出を行なった。 一次生産の推定を行なうにあたって用いたパラメータに関しては、これまでに行われた観測や実験データに基づいた論文の文献検索を行ない、自然条件下で取りうる範囲でパラメータを変化させ、一次生産の推定を行なった。その結果、推定された湖沼全体の一次生産は、光環境に基づいた方法のほうが栄養塩環境に基づいた方法よりも高い値になる傾向がみられたが、概ね近い推定値となることを明らかにした。また、どのパラメータが両推定方法の一次生産の差を大きくするのかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般には、一次生産の理論的な推定値は用いるパラメータ値によって大きく異なる。そこで本年度は、モデルに基づく一次生産の推定値の精度を上げるため、モデルに用いるパラメータの推定とその取りうる変動幅の推定に力を注いで研究を進めた。パラメータの推定値(平均値)のみではなく、取りうる範囲(推定最小値、推定最大値)も考慮に入れたことから、どのパラメータが一次生産の推定値を大きく変動させるのかを明らかにすることがで、一次生産推定の基礎理論を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、一次生産を見積もるにあたって2つの異なる理論的方法の推定値とその傾向が明らかになったことから、次年度では、結果を学術論文としてまとめることを行なう。 また次年度には、湖沼生態系以外で起こりうるレジームシフト現象に着目した研究を行なう。具体的には、海洋沿岸域にあるサンゴ礁生態系と陸域にある森林生態系を扱う。サンゴ生態系では、白化現象に関して、サンゴと大型藻類の間のレジームシフトの研究を行なう。森林生態系では、気象条件の変化やシカなどの食害が森林動態に与える影響について理論的に研究を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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