研究課題/領域番号 |
24770027
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
中村 隆俊 東京農業大学, 生物産業学部, 講師 (80408658)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 湿生植物 / 呼吸 / 湿原 / 窒素 / スゲ / 温度 |
研究概要 |
北方系湿性植物であるヤラメスゲの南限域個体群(濤沸湖・風蓮湖・落石湿原・湧洞沼・マクンベツ湿原・高瀬川河口)から採取した種子を用いて水耕栽培を行った。培養液は、窒素ガスによるバブリングを行い低酸素状態とし、生育温度20℃および35℃条件下での根の呼吸特性・N獲得特性・根成長特性について比較実験を行った。根呼吸速度やN獲得速度、成長速度にみられる産地間の違いについて、各個体群が分布する温度環境との関係から考察した。 20℃環境下では、温暖な地域由来の個体ほど成長が早く(マクンベツ湿原産、高瀬川河口産)、寒冷地由来の個体(落石産、風蓮湖産)と同程度の酸素消費量でより多くのNを獲得できることが示された。これは、夏期の高温によってN獲得や成長に投資できるエネルギーが低下しがちな温暖地の個体群にとって、極めて適応的な振る舞いであると考えられた。 20℃および35℃での応答特性を比較した結果、根呼吸速度には両温度間の有意差は認められなかった。このことから、低酸素環境下で生育する湿生植物は、利用可能な酸素量が常に制限されているため、気温が上昇しても呼吸量を増加させられないことが明らかとなった。また、35℃環境下では、植物体全体・地上部・地下部の相対成長速度はいずれもやや低下し、さらに窒素吸収速度については産地に関わらず大幅な低下を示した。また、根呼吸あたりの地下部相対成長速度については両温度間で有意な差はみられなかったが、根呼吸あたりの窒素吸収速度は、35℃環境下で20℃環境下よりも50%以上低い値となった。以上のことから、高温環境下では、特に窒素獲得に著しい阻害が生じ、根呼吸あたりの窒素獲得効率が大きく低下することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤラメスゲの水耕実験に関しては、ほぼ予定した測定を終えることができ、仮説通りの結果がえられたことから、概ね順調に進展した。また、ホロムイスゲの種子採取も予定通り行われた。しかし、予備発芽実験によりホロムイスゲの発芽率が非常に悪いことが判明したため、今年度以降の研究進捗が懸念される。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、実験方法、評価手法共に大きな問題点もなく順調に進展している。しかし、種子の発芽状況により実験進捗が大きく左右されるため、対象種の種子をできるだけ多く採取するよう努める必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
呼吸の測定に要する時間が多いため、同時に複数サンプルを測定できるシステムを構築する予定である。従って、呼吸測定に使用する機器(DOメーター)や電極の追加等に関する研究費の支出を見込んでいる。
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