研究課題/領域番号 |
24770027
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
中村 隆俊 東京農業大学, 生物産業学部, 講師 (80408658)
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キーワード | 湿生植物 / 呼吸 / 温度 / スゲ / 湿原 |
研究概要 |
貧栄養環境に適応する北方系湿生植物であるホロムイスゲの南限個体群(静狩湿原、浅茅野湿原、風蓮湿原、落石湿原)から採取した種子を用いて、H24年度ヤラメスゲ(富栄養環境適応種)と同様な設定で水耕栽培を行った。培養液は窒素ガスによるバブリングを行い低酸素状態とし、生育温度20℃および35℃条件下での根の呼吸特性・窒素獲得特性・根成長特性について調べた。 浅茅野湿原産種子と静狩湿原産種子の発芽率が非常に低く、水耕実験に必要な個体数がやや不足したが、根呼吸量あたりの窒素獲得量や成長量について、産地間の比較を行った。H24に実験を行ったヤラメスゲでは温暖地由来の個体群ほど少ない酸素消費で効率的に窒素を獲得することが示されたが、ホロムイスゲでは種子産地間の温度差と関連する明瞭な振る舞いは認められなかった。これらのことから、北方系湿生植物は温暖地に分布する個体群ほど効率的に酸素を利用するとこれまで予想していたが、北方系湿生植物であっても窒素要求量の多い富栄養適応種(ヤラメスゲ)と窒素要求量の少ない貧栄養適応種(ホロムイスゲ)では酸素利用戦略が大きく異なることが示唆された。 ホロムイスゲにおける20℃と35℃条件間での生態生理的応答特性の比較では、ヤラメスゲと同様に呼吸量あたりの窒素吸収量が35℃で低下することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホロムイスゲの水耕実験に関しては、一部の個体群で発芽不良が認められたものの、ほぼ予定した測定を終えることができ、当初掲げた仮説とは異なる結果が得られた。また、ヨシ・マコモの種子についても、複数の産地から採取することができた。しかし、予備発芽実験では、マコモの発芽率が全般的に著しく悪いため、産地間の比較が困難となる可能性が浮上した(ただし、種間の比較については十分な個体数を確保できる見込み)。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、実験方法、評価手法共に大きな問題点も無く順調に進展している。今後は、発芽率が低く個体数を十分確保できなかった種・産地について、種子採取をもう一度行い追加実験を加える予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験補助員として雇用する予定であった研究員が出産・育児のため雇用不可能となり、人件費・謝金の執行が滞った。また、同レベルの実験スキルを有する代替者の確保ができなかったため。 今後は、補助員不在でも研究計画を遂行できるよう、実験効率化のための機器の充実をはかる(多サンプルの同時処理・測定や自動測定・記録機能を有する機器・消耗品の購入)。また、必要なスキルを有する補助員の確保に努める。
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