研究課題/領域番号 |
24770029
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
安部 淳 神奈川大学, 理学部, 助手 (70570076)
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キーワード | 性比調節 / 適応度 / 進化 / 寄生バチ / Melittobia australica / 雄間闘争 / 遺伝構造 / 血縁度 |
研究概要 |
寄生バチMelittobiaは、既存理論の予測に反し、いかなる状況のもとでも極端な雌偏向性比(雄率1-5%)を示す。本研究の目的は、本寄生バチの集団的遺伝構造がこの性比に与える影響を評価することである。 当該年度は、昨年度に引き続き、集団的遺伝構造以外の要因、すなわち直接的適応度(個体が次世代に残す子の数)が性比によって受ける影響について評価した。遺伝マーカーの遺伝子型を揃えた複数の代理母が産んだ子を集め、仮想的な母バチが産んだ子と想定することにより性比を人為的に調節し、その仮想的母バチの適応度を遺伝子型を追跡することにより測定した。その結果、実際のMelittobiaが示す性比(約2%)よりも、既存理論の予測する性比(約20%)のほうが高い適応度を残せることが明らかとなった。この結果は、自らの子の数を評価する直接的適応度だけでは、本寄生バチの性比を説明できないことを示している。今後は、個体間の血縁関係を含んだ間接的適応度を評価するため、野外集団における遺伝構造を解明することが重要である。 集団的遺伝構造の解析のため、当該年度は野外調査を行い、Melittobiaの自然状態における性比を測定し、そのサンプルを得ることができた。その結果、これまでに実験室で得られている性比とは異なる性比のパターンも得られている。今後、それらのサンプルを用いて、遺伝マーカーを使って遺伝構造の解析を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、集団的遺伝構造以外の要因が性比調節に与える影響については、実験が完了し、その影響を評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、集団的遺伝構造を評価するため、野外調査を継続し、得られた野外サンプルから順次、遺伝マーカーを用いた解析を進める。さらに、現在までに得られている遺伝マーカーだけでなく、今後も新たな遺伝マーカーを開発し、より詳細なデーターを得る必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、主に室内実験を行い、消耗品等のための費用をあまり使わないで済んだため。 今後は野外サンプルを遺伝マーカーを用いて解析を進めるため、消耗品や人件費で費用を消費する。
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