研究課題/領域番号 |
24770036
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山口 夕 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (60335487)
|
キーワード | 内生ペプチドエリシター / シロイヌナズナ / 防御応答 |
研究概要 |
形質転換体を使った成熟ペプチドの量的変化や、アポプラストへの放出の有無については現在のところ新たな知見は得られていない。植物ホルモン量の測定から、ストレスのかからない条件でも、AtproPep1過剰発現体験においてはジャスモン酸イソロイシン含量が高いことが示された。受容体が細胞膜上に存在することを考え併せると、細胞死ではないペプチドの放出機構の可能性が改めて高まった。 平成24年度の研究より新たに、内生ペプチドエリシターであるAtproPep1の過剰発現シロイヌナズナで、塩ストレスに対する耐性が向上していること、一部の耐塩性に関わる遺伝子の塩ストレスによる誘導が過剰発現体で抑制されていることが分かってきた。平成25年度ではこの現象の更なる解析を試み、耐塩性に関わる遺伝子の発現量の変化をリアルタイムPCRによって解析したところ、過剰発現体での顕著な抑制を定量的に確認できた。また、NaCl処理に加えてKCl処理、マンニトール処理、乾燥ストレス処理を行った結果、耐性がNaClに特異的であることを明らかにした。また、ペプチド前駆体や受容体の遺伝子発現が、塩ストレスにより根で顕著に上昇することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度の計画では、前駆体タンパク質およびペプチドの検出および定量を進めるとともに、AtproPep1過剰発現による耐塩性の獲得機構について定量的RT-PCR解析や植物ホルモンの定量を中心にを進めることを予定していた。後者については、ほぼ予定通り進めることができたが、前者についてはほとんど進んでいないため、遅れていると判断した。遅れた理由としては、研究代表者の異動によって研究室をゼロからセットアップする必要が生じたことと、遺伝子組換え実験の承認および遺伝子組換え生物の譲渡しの承認にも時間を取られたことがあげられる。そのため、一年間の研究期間の延長を申請した。
|
今後の研究の推進方策 |
もともと平成25年度に予定していた、ストレス処理前後の前駆体タンパク質と成熟ペプチドの定量解析を中心に進める予定である。 ペプチドの放出機構を明らかにしていくためには、AtproPep1過剰発現体で本来の形のペプチドが生成されていることが重要である。そこで、これまでにウェスタンブロッティングで検出されている大小のタンパク質が本当に前駆体タンパク質と成熟ペプチドであるかどうかを、アフィニティカラムなどを利用して簡易精製した後に質量分析装置によって確認する。その上で、アポプラスト溶液からの検出、塩ストレスによる量的変化ついても解析する。また、ストレス処理時の細胞死の検出も行なうことで、アポプラストへのペプチドの放出が能動的であるのか受動的であるのか調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
細胞死を伴わない条件においても、AtproPep1過剰発現シロイヌナズナで表現型が現れるものの、ペプチドの簡便・迅速な検出方法の確立に手間取っており、アポプラストへ放出されていることの確認に至っていないため。また、平成25年4月より所属機関を変更して、独立した研究室を一からセットアップしていることに加えて、平成26年2月に別建物への移動があり、思うように実験を進めることができなかった。 形質転換シロイヌナズナを育てるための栽培用品(土、栄養、培地など)、ペプチドおよびタンパク質の精製試薬及び器具、ペプチド、タンパク質の検出用試薬(抗体や電気泳動関連試薬)、成熟ペプチドの確認のための質量分析装置使用料など。
|