研究課題/領域番号 |
24770037
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
華岡 光正 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (30508122)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 色素体 / 転写制御 / 分化 / クロマチン免疫沈降法 / シロイヌナズナ / 培養細胞 |
研究概要 |
ChIP法は、生細胞中のDNA-タンパク質間の結合を固定し、目的タンパク質の抗体で免疫沈降することで、ターゲットの同定のみならずin vivoでの動態をリアルタイムにモニターすることのできる優れた手法である。本研究では、ChIP解析系を多様な色素体分化における転写制御ネットワークの理解に適用することを目指し、以下の通り研究を行った。 1. ChIP法を用いた葉緑体分化解析系の確立 光に依存した葉緑体分化プログラムの基本機構については未だ不明点が多い。本研究では、サンプリングなどの取り扱いがが容易なシロイヌナズナの培養細胞系を用いて、分化メカニズムの解明を目指した。葉組織に由来するT87培養細胞を暗所で培養したところ、4~5週間かけてクロロフィル量が段階的に減少し、細胞中の葉緑体が原色素体に脱分化したものと考えられた。また、4週間暗条件下で培養した細胞に再び光を照射したところ、速やかなクロロフィルの再蓄積と光合成遺伝子の転写活性化が見いだされ、適切に分化誘導系が構築できたと考えられた。さらに、葉緑体シグマ因子SIG1の蓄積量とそのプロモーターへの結合も緑葉組織における結果と相関しており、T87細胞を用いたChIP解析系の有用性が確認できた。 2. 非光合成色素体における転写制御の解析 アミロプラストはデンプンの合成と貯蔵に関わる色素体であるが、タバコBY-2細胞では培地中の植物ホルモンの置換によってその分化が誘導されることが示されている。本研究ではポストゲノム解析を進めるため、シロイヌナズナの培養細胞Alexを用いた。分化誘導条件を検討した結果、BY-2細胞とは異なり培地中のショ糖濃度に依存してデンプンの蓄積が制御されることを見いだした。また、アミロプラスト分化に関わる転写制御系を理解するためマイクロアレイ解析を行い、分化誘導前後で大きく発現レベルが変動する遺伝子群を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画として掲げた項目は概ね終了しており、クロマチン免疫沈降(ChIP)法を利用して、色素体分化における転写制御機構の実体を明らかにするという本研究の目的の達成に向けて順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究目的、研究計画にしたがって次年度の研究を遂行する。特に大きな問題は現時点では挙がっていないが、研究の進行に応じて方向性や内容を微調整しながら進める。当初の計画に掲げた内容を上回る実績が得られるよう、効率的、効果的な研究の推進に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、クロマチン免疫沈降によって得られたDNA量を測定するために定量PCR解析を行う。この実験においてある程度まとまった量の試薬が必要となるが、サンプルの確保に少し時間を要したこともあり、一部の大規模解析を二年目の初頭に行う形に変更した。そのため、本解析に関係する一連の経費を次年度に使用する。なお、次年度分に請求する予定の研究費は、2年目の研究計画の遂行のために当初の予定通り使用する。
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