研究課題
高等植物の色素体は、光合成組織では葉緑体、貯蔵組織ではアミロプラストやクロモプラストなど、多様に分化することが知られており、それぞれの色素体に特徴的な遺伝子の発現調節が重要である。成長初期の植物では、光に依存した葉の発達に伴って、細胞中の色素体は未分化な原色素体から葉緑体へと分化するが、この過程においては、核ゲノムと葉緑体ゲノムに分かれてコードされる遺伝子群の協調的な発現が必須である。これまでに、葉緑体分化に関わる様々な転写制御因子が報告されているが、それらによる調節メカニズムの全体像の理解には至っていない。本研究では、シロイヌナズナの葉緑体RNAポリメラーゼの調節サブユニットとして転写制御に関与する6種のシグマ因子のうち、特に葉緑体分化に深く関わるSIG2とSIG6に着目し、これらの役割分担や各々の特異的な機能の解明を目指した。本研究では葉緑体分化のプロセスをより詳細に調べるため、均一なサンプルを得やすく、経時的な回収が容易なシロイヌナズナの葉組織に由来するT87培養細胞を材料とし、初年度までに明暗処理による可逆的な分化誘導系を構築した。葉緑体分化過程における様々な遺伝子発現量の変化をノザン解析により調べた結果、核遺伝子であるSIG2とSIG6に加えて、葉緑体の光合成遺伝子であるpsbD やrbcLの発現が活性化することを見いだした。また、SIG2とSIG6のC末端にFLAGタグを付加した形質転換T87細胞を構築し、クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いてin vivoにおけるシグマ因子-プロモーター間の結合レベルを調べた結果、SIG2の発現上昇とターゲットプロモーターへの結合レベルの変化に相関が見られた。しかしながら、SIG2とSIG6の発現時期が重複しているなど、新たな問題点も見受けられ、この系を用いた詳細な解析にはさらなる条件検討が必要であると考えられた。
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