研究課題
ピロリン酸(PPi)の分解は、種子の貯蔵脂質をもとにした糖の新生、また、それを必要条件とした細胞増殖能保持に必須である。しかし、PPi分解酵素活性を消失したfugu5変異体について、糖の新生がなぜ特異的に阻害されるのかは謎である。そこで、貯蔵脂質から糖新生に到るまでの代謝産物をメタボローム網羅的解析により、その阻害メカニズムを明らかにした。一方、fugu5ではPPiが細胞分裂を含む多くの細胞機能を阻害するが、興味深いことに細胞肥大はむしろ昂進する。この点について、fugu5に対する重イオンビーム照射で誘発した表現型の抑圧変異株を使って、細胞肥大のメカニズムの解明を進めた。1 貯蔵脂質に由来するショ糖生合成の阻害のメカニズム(1)貯蔵脂質からショ糖に到るまでの中間代謝産物を定量化した結果、野生型に比べて、fugu5におけるGlc-1-Pの量は約2倍に増加した一方で、UDP-Glcの量は半分に減少した。(2)さらに、野生型とAVP1pro::IPP1とを比較したところ、Glc-1-P はほぼ同じ量を示したのに対し、UDP-Glcの量はむしろAVP1pro::IPP1において2倍以上増加した。以上により、過剰蓄積するPPiはUDP-Glucose Pyrophosphorylase (UGPase)を特異的に阻害することで、糖新生と阻害する。2 貯蔵脂質に由来するショ糖生合成の阻害は補償作用を引き起こすのに十分か(1)グリオキシル酸回と糖新生それぞれに異常を持つicl-2とmls-2及びpck1-2の子葉においてのみ補償作用が認められたことから、貯蔵脂質に由来するショ糖生合成の阻害は補償作用を引き起こすのに十分であると結論付けた。3 fugu5に見られる細胞肥大はどのように起こるのか(1)fugu5の細胞肥大を抑制するA#3-1変異の原因遺伝子はEnoyl-CoA Hydratase 2 (ECH2)であることを明らかにした。今後更なる解析が必要である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
Plant Morphology
巻: In press ページ: In press
Plant Physiology
巻: 162 ページ: 831-841
10.1104/pp.113.216796
Plant Signal Behav.
巻: 8 (11) ページ: e27204
10.4161/psb.27204
Plant Cell Physiol.
巻: 54 ページ: 1989-1998
10.1093/pcp/pct138
http://www.ferjani-ali.jp/
http://univinfo.u-gakugei.ac.jp/u-gakugei/hp/ferjani1.html