研究課題
1. フォラシン・エクオリン同時発光測定系の開発フォラシン・エクオリンの発光強度変化を同時計測するためには、両者の発光波長の重なりを解消し、分光計測することが必要である。エクオリンの発光基質として最大波長約400 nmを示すアナログ化合物を用いた場合にも野生型セレンテラジンと遜色ない発光強度が得られた。フォラシンの最大発光波長は約490 nmであるので、450 nm付近に反射域を有するバンドパスフィルターを導入し、2台のフォトン検出器でそれぞれエクオリン、フォラシンの発光強度変化を計測する発光分光計測装置を作製した。これまでに作製したフォラシン・エクオリン導入シロイヌナズナについて、耐性マーカーが示す分離比から単一コピー導入の系統を6種得ており、ホモ体の選抜を進めている。2. フォラシン発光メカニズムの解明フォラシン発光の効率・強度を高めることが出来れば検出感度の向上が望まれ、細胞・組織レベルでのバイオイメージングへの活用が期待出来る。これまでの研究に於いて、点変異導入遺伝子を発現させた出芽酵母を用いることにより、発光基質であるデヒドロセレンテラジンの結合部位を同定している。一方で、フォラシンの可溶化と安定に寄与すると考えられる糖鎖修飾部位は不明であった。そこでアミノ酸配列から推測された4カ所の予測配列に点変異を導入した蛋白質を出芽酵母に発現させ、ウエスタンブロット解析をおこなった。その結果フォラシンは少なくとも出芽酵母発現系において、2カ所の糖鎖修飾を受けていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究における最も主要な課題であった発光分光計測装置を設計し、その作製と評価を終えることが出来た。しかしながら今回作製した装置では外部からの光の侵入をなくすために光遮蔽を重要視しすぎたため、試料交換に過度の労力を要する。研究効率の向上、本研究により得られた実験技術の普及に向けては、より使い易く改良を進める必要がある。エクオリン・フォラシンを共発現するシロイヌナズナについて両遺伝子をそれぞれ単一コピー有する組換え体6系統を選抜した。ホモ体を含むと思われるT3世代の種子をそれぞれ20系統ずつ、独立して採集ずみである。出芽酵母発現系を用いた点変異導入解析を推進し、2カ所の糖鎖修飾部位を明らかにした。この実験は当初の研究計画には含まれていないが、得られた知見を基に糖鎖修飾がフォラシンの機能と性状、特に安定化と可溶化に与える影響を今後詳細に解析することで、高感度次世代プローブの開発に向けた基礎的知見を得られると期待される。
これまでに得られたエクオリン・フォラシンをそれぞれ単一コピーで導入したシロイヌナズナ6系統よりホモ体を選抜したのち、ウエスタンブロット解析および発光強度測定によりエクオリン・フォラシンを共に強発現する、または同時計測に適した組換え体系統を確立する。これを試料とし、今年度の研究において開発した微弱発光分光計測装置を用いることで病原菌エリシターであるflg22に応答したカルシウムシグナル、ROSシグナルの同時測定、阻害剤を用いた分子機構解析を進める。これまでの研究からflg22は細胞質におけるカルシウムシグナル、ROSシグナルを共に誘因することが知られているがその分子機構、特に両シグナルがどのように連携するのかについては明らかでない点が多い。本研究では、これまで不可能であった細胞質中ROS濃度変化のリアルタイム計測、カルシウムシグナルとの同時計測が可能であり、従来の手法では得られなかった新たな知見が得られると期待される。
該当無し
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Fertility and Sterility
巻: 99 ページ: 400-407
10.1016/j.fertnstert.2012.10.022
Nature commun
巻: 3 ページ: 926
10.1038/ncomms1926
Plant Signaling and Behavior
巻: 7 ページ: 1-8
10.4161/psb.20783