細胞周期が、概日時計に制御されていることは広く知られており、細胞周期が時刻依存的に制御されることは、紫外線によるDNA損傷の抑制や、発生や成長を環境に適応して調整するなど、生物にとって重要な役割を持つと考えられている。本研究は、概日時計による細胞周期調節の分子機構解明のために、シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942をモデル系として、概日時計が細胞分裂を時間的に調節する分子機構について、時計タンパク質が直接関与するのか、または細胞分裂装置の発現等を介して間接的に制御するのかを検証することを目的とした。 平成26年度に実施した研究により、時計タンパク質とDNA複製に関わる因子についてシアノバクテリア細胞内における相互作用を詳細に調べたところ、これらの相互作用していること、また、概日時計と細胞分裂がこれらの相互作用によって調節されていることが示唆された。DNA複製は生物にとって必須機能であるが,シアノバクテリアではDNA複製開始因子を破壊しても生育に影響はなかった。これらの結果から、シアノバクテリアにおいては、概日時計本体である時計タンパク質が、直接的に細胞周期を調節している可能性が示唆された。細胞分裂装置と時計タンパク質との相互作用について、今後さらに調べることが必要である。また、概日時計による転写制御が基になり細胞周期が調節されている可能性についても、解析を進めることが重要である。
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