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2012 年度 実施状況報告書

共生体感染により変動する共生遺伝子制御ネットワークの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24770050
研究機関基礎生物学研究所

研究代表者

武田 直也  基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 助教 (60571081)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード共生 / トランスクリプトーム / 遺伝子制御ネットワーク
研究概要

申請者がマメ科植物ミヤコグサで新たに同定した菌根共生変異体cerberusとnsp1の表現型解析を、これまでに確立したマーカー遺伝子の発現解析、蛍光染色よる微細共生構造の観察、前感染構造(感染前の細胞内リモデリング)の可視化技術を用いて行った。その結果、これらの変異体は共生マーカー遺伝子の発現や前感染構造の形成、共生器官の形成などは正常に行われていることが分かった。しかし、これらの共生体の宿主植物への感染率は低下しており、これまでに知られていた感染がまったく進行しない菌根共生変異体とは異なり、感染の定量的制御の異常が原因となって表現型が表れていることが示唆された。この共生因子の発見と変異表現型を引き起こす原因となった遺伝子発現の異常を観測するために、次世代シーケンサーを用いたRNAseqによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、nsp1に見られる共生体感染不全に植物ホルモンであるジベレリンの関与が示唆されたことから、菌根共生に対するジベレリンの作用についての研究を開始した。
もう一つの共生因子として同定している菌根共生に対して負の影響を与えると考えられる転写抑制因子として考えられるRAMI1とそのホモログRAMI2について、作成した過剰発現体、発現抑制体の表現型解析を行った。RAMI2抑制体では地上部での生育阻害の表現型がみられ、また地下部での発現が低いことからRAMI2は主に地上部において作用することが推定された。そのため、RAMI1の共生における機能ついての解析を行った。
RAMI1の抑制変異体においては根粒形成の不全がみられるが、現在のところ菌根共生における明確な感染異常は観測されていない。RAMI1に関してはトランスポソン挿入された植物体を得ることができたことから、このホモ変異体の取得を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目標であった共生変異体が示す感染の停止段階を明確化することができた。また変異体が示す表現型とトランスクリプトームの比較から、NSP1によるジベレリンシグナルの制御と、その異常による感染不全の機構が明らかとなった。NSP1はGRASファミリーの転写因子をコードしていることから、この成果はNSP1による共生遺伝子制御が植物ホルモンシグナルへの接続していることを示す重要な知見となるものであった。また、CERBERUSについても宿主内での菌糸の伸長に影響を与える共生遺伝子群をトランスクリプトーム解析により同定することができた。これらの結果から当初の予定よりも大きな研究の進展と今後の発展が期待できる。一方で、RAMI1の解析については過剰発現体や抑制体の解析から菌根共生における表現型解析を行ったが、RAMI1タグラインが取得できたことから、トランスクリプトーム解析をこの変異体を用いて行うため、次年度に延期している。

今後の研究の推進方策

これまでのnsp1変異体の解析から明らかとなった共生遺伝子ネットワークとしてのジベレリンシグナル伝達と共生シグナル伝達との関連の解析を進めていく。また、cerberus変異体についてはシグナル伝達としての機能ではなく、根の細胞壁構造の変化による伸長阻害が表れている可能性がトランスクリプトーム解析によって示唆されている。CERBERUSはE3ユビキチンリガーゼとしてプロテアソーム系を介したタンパク質発現制御に関わると考えられることから、同定した遺伝子群との関連を検証していく。これらの共生因子と他の共生変異体との関連についても解析を行うことで、共生遺伝子制御の全体像を見ることができると考えられる。しかし、ジベレリンを介した共生体感染制御については海外の複数の研究グループが注目して研究を進めており、これらの研究室との競合することが懸念される。そのためこの研究課題を最優先として集中して解析を行っていく。
RAMI1のRAMI遺伝子にトランスポソンが挿入されたタグラインを入手できたことから、RNAiによるノックダウンではなく、遺伝子機能が完全に破壊された個体での表現型や機能解析を行うことができるようになっている。そのため、この破壊株での解析を優先的に行うことで、研究の推進を行っていく。

次年度の研究費の使用計画

詳細な表現型の観察のため、現在保有する実体顕微鏡への蛍光照明装置の増設を行う。この機器については当初の予定より高性能な機器が必要となったため、昨年度予算と合わせて年度の初期に購入し、研究の推進に充てる。またこれまでの研究成果の発表のために宮崎県で行われる国際窒素固定会議への学会参加費を計上する。前年度に行えなかったRAMIのトランスクリプトーム解析の予算とChipSeqによる解析を行うために、次世代シーケンスの費用を計上する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] TOO MUCH LOVE, a novel kelch repeat-containing F-box protein, functions in the long-distance regulation of the legume-Rhizobium symmbiosis.2013

    • 著者名/発表者名
      Takahara M, Magori S, Soyano T, Okamoto S, Yoshida C, Yano K, Sato S, Tabata S, Yamaguchi K, Shigenobu S, Takeda N, Suzaki T, Kawaguchi M.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiology

      巻: 54 ページ: 433-447

    • DOI

      10.1093/pcp/pct022

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TRICOT encodes an AMP1-related carboxypeptidase that regulates root nodule development and shoot apical meristem maintenance in Lotus japonicus.2013

    • 著者名/発表者名
      Suzaki, T, Kim, C.S, Takeda N, Szczyglowski, K. and Kawaguchi, M.
    • 雑誌名

      Development

      巻: 140 ページ: 3530361

    • DOI

      10.1242/dev.089631

    • 査読あり
  • [学会発表] Roles of Gibberellin signaling in arbuscular mycorrhiza and root nodule symbiosis.2013

    • 著者名/発表者名
      武田 直也
    • 学会等名
      植物生理学会年会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県)
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] 新たな共通共生因子の共生体感染過程における役割2012

    • 著者名/発表者名
      武田 直也
    • 学会等名
      植物微生物研究交流会
    • 発表場所
      神戸大学(兵庫県)
    • 年月日
      20120925-20120927
  • [学会発表] COMMON SYMBIOSIS SYSTEM REVEALS INFECTION MECHANISM OF ARBUSCULAR MYCORRHIZAL FUNGI IN LEGUMINOUS PLANT Lotus japonicus2012

    • 著者名/発表者名
      武田 直也
    • 学会等名
      1st Molecular Mycorrhizal meeting (招待講演)
    • 発表場所
      ドイツ ミュンヘン大学
    • 年月日
      20120906-20120907
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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