RNA結合タンパク質PpCSPの (A) 標的RNAおよび (B) 相互作用タンパク質を同定することで、PpCSPによるリプログラミング促進の分子機構を解明することが本研究の目的である。 (A) 昨年度までに、RNA免疫沈降―シーケンシング法によって、PpCSPがほぼ全てのmRNAと結合するという結果が得られた。この結果をさらに検証するため、現在最も精度よく結合RNAを単離できるとされているRNA crosslinking immunoprecipitation-sequencing (CLIP-seq) を進めている。CLIP-seqは動物の培養細胞以外を試料として用いた実験例が存在しない。そのため、ヒメツリガネゴケを用いた実験の条件検討を行い、クロスリンク条件の最適化や放射性同位体を用いない手法の開発を行った。また、mRNA結合タンパク質は一般にmRNAの成熟や安定性、翻訳の制御に機能する。PpCSPがmRNAの安定性に機能するのであれば、PpCSPの標的mRNAはPpCSP過剰発現株で高発現を示すと考えられる。野生型と比較してPpCSP過剰発現株で顕著に高く発現する遺伝子群について、遺伝子欠失株や過剰発現株の作出と表現型解析を行った。その結果、過剰発現によって形態異常を示す複数の遺伝子を同定した。今後、これらの株を用いたリプログラミングの表現型解析とCLIP-seqを行うことで、PpCSPの標的mRNAの候補を同定できると期待される。 (B) 昨年度までに、免疫沈降法および液体クロマトグラフィー―質量分析法により、PpCSPと相互作用するタンパク質を複数同定した。これらと蛍光タンパク質の融合タンパク質をヒメツリガネゴケに発現させたところ、細胞質基質においてPpCSPタンパク質との共局在が観察された。以上の結果から、PpCSPの相互作用タンパク質を複数同定することに成功した。
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