研究課題
植物細胞の分化全能性を支えるRNA制御機構を明らかにするため、今年度は以下の解析を行った。1、シュート再生異常に関わる異常RNA感知除去システムに関する変異体昨年度までの解析から、異常RNAを感知し除去するシステムに関わる因子の変異体が、シュート再生異常を示すことが分かっていたが、H25年度にはシュート再生過程や変異体の芽生えを用いた詳細な解析を行った。解析結果からは、異常RNA感知除去システムに関する変異体でのシュート再生の異常はオーキシンへの応答異常と関連している可能性が示され、異常RNA感知除去システムがオーキシンシグナルを適切に調節することによって植物のシュート再生を制御していることが明らかとなった。2、分化全能性制御に関わるノンコーディングRNAの転写制御解析これまでに、ノンコーディングRNAの一種である核内低分子RNA(small nuclear RNA; snRNA)の発現制御が分化全能性制御に重要であることを明らかにしてきた。今回、snRNAの転写を特異的に正に制御する遺伝子SRD2のホモログ遺伝子を様々な植物種から単離し、シロイヌナズナsrd2変異体に導入する実験を行った。この結果、さまざまなsnRNAレベルの植物体を生み出すことに成功し、snRNA発現レベルが脱分化や器官再生の能力と相関することを突き止めた。これにより、snRNAレベルが植物細胞の分化全能性を規定する分子実体であるというこれまでの作業仮説を実験的に確かめることができた。
2: おおむね順調に進展している
植物細胞の脱分化や器官再生制御に関わるRNA制御因子を新たに複数同定することに成功し、とくに興味深いものについては詳細解析を進めることができた。さらに、ノンコーディングRNAであるsnRNAについても分化全能性発現との関わりを実験的に明らかにした。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
最終年度であるH26年度には、これまで進めてきた変異体解析を終了させ、論文発表を行う予定である。さらにノンコーディングRNAについては次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を行い、snRNA分子種の網羅的解析に加えて新たなRNA種の同定を目指す。また、同定済みの新規mRNA型ノンコーディングRNAについてはFISH解析を行い、脱分化進行との関わりを明らかにしたい。
当初の予定では海外学会で研究成果を発表するための旅費を計上していたが、助成初年度に第二子を出産し、まだ子どもがちいさいことから海外出張を断念したため未使用額が発生した。最終年度であるH26年度には、積極的に海外出張および論文成果発表を行い、繰り越し分についても使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
Plant Biotechnology Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Nature Communications
巻: 4 ページ: 2247
10.1038/ncomms3247
http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130615_1/
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id86.html