研究課題/領域番号 |
24770053
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩瀬 哲 独立行政法人理化学研究所, 細胞機能研究チーム, 研究員 (40553764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脱分化 / カルス / 傷害 / ストレス / 活性酸素 / 転写因子 |
研究概要 |
細胞の脱分化は、一度分化した体細胞が多分化能を再獲得する過程であり、多細胞生物に広く観られる現象である。脱分化現象が顕著に観られるのは、傷害によって組織の損傷が起きた時であるが、これには、傷害部位を脱分化細胞で覆うことで外界から生体内部を保護し、更に組織・器官を再分化させて傷を修復するという生物学的意義があると考えられる。しかし、傷害をはじめとするストレスがどのように脱分化を促進するのか、また脱分化細胞の細胞特性がどのように維持されるのかといった分子メカニズムはこれまでほとんど明らかにされておらず、広く生物科学における重要な研究課題の一つとなっている。本研究では、傷害およびその他のストレスによって発生することが知られているReactive Oxygen Species (ROS)等に着目し、それらストレス因子がどのように脱分化促進因子の機能を活性化させるかについて、その分子機構を明らかにする。 平成24年度は、まず傷害によってROSシグナルが活性化するか標識試薬を用いて確認した。続いてROSシグナル関連変異体を用いて、傷害によるカルス形成率の変化を調べた。またROSシグナルを活性化または抑制する薬剤を処理した培養細胞をホストにし、着目している脱分化促進因子のプロモーター活性の変化を観察した。加えて、着目している脱分化促進因子について遺伝子発現の直接制御因子の単離および機能解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナの胚軸を用いたカルス誘導系から、傷害部位でROSシグナルが活性化することが実際確認できた。また、ROSシグナル変異体では傷害による胚軸からのカルス形成率が変化することが明らかとなった。ROSシグナルを抑制する薬剤を処理した培養細胞をホストにした遺伝子一過的発現系においては、着目している脱分化促進因子のプロモーター活性が変化することを観察した。着目している脱分化促進因子について遺伝子発現の直接制御候補因子の探索を行ったところ、パブリックデータベースにおいても共発現因子としてリストアップされてくる因子が単離された。また、この因子も傷害によって発現が促進することが傷害組織の遺伝子発現解析から明らかとなった。これらの結果は、当初予定した研究計画で期待された研究進度と概ね一致している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、機能変異株、マーカーライン、ChIP解析等を用いて、傷害およびその他のストレスから細胞の脱分化までの分子カスケードを、着目している因子を中心に明らかにしていく
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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