研究課題
AP2/ERF型転写因子の一つであるWIND1は、傷害応答因子であり、シロイヌナズナにおいて傷害部位での細胞の脱分化とカルス形成を正に制御する。WIND1プロモーターを用いた酵母ワンハイブリット解析から、上流因子候補の転写因子を複数選抜した。この内、熱ショック応答に関与する転写因子は、WIND1の共発現因子としてpublic databaseでも高順位にリストアップされる。傷害処理をしたシロイヌナズナ胚軸のトランスクリプトーム解析から、この上流候補因子は熱ショックのみならず、傷害ストレスでも短時間に発現が誘導されることが分かった。また、WIND1は熱ショックでも発現が誘導され、熱ショックによる脱分化に関与することが明らかとなった。熱ショック因子の機能欠損体では、定常時や熱ショック後におけるWIND1の発現が抑制されていることや、熱ショック時の脱分化が抑制されることから、熱ショック/傷害ストレス→熱ショック因子→WIND1→脱分化というカスケードが存在することが示唆された。活性酸素種(ROS)の発生がこれらのストレスの引き金となっている仮説に基づいて研究を進めた。シロイヌナズナの胚軸を用いたカルス誘導系から、傷害部位でROSが発生することが実際確認できた。ROSシグナルを抑制する薬剤を処理した培養細胞をホストにした遺伝子一過的発現系においては、着目している脱分化促進因子のプロモーター活性が変化することを観察した。しかしながら、傷害ストレスによってROSを過剰に生成する変異株、ROS生成が抑えられる変異体を用いたカルス形成実験においては、カルス形成率の変化において再現性の良い結果が得られておらず、仮説を強く示すデータが得られていない状況である。今後は、ROSの関連も詰めつつ、他の可能性、例えばカルシウムイオンの関与、タンパク質の翻訳後修飾による制御等について研究を進めていく。
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