研究概要 |
リラキシンは哺乳類において妊娠後期の血中で検出され、妊娠維持および分娩補助の役割を果たすホルモンとして知られている。近年の研究により、哺乳類のリラキシンは単一のホルモンではなく、リラキシン関連ペプチドとして、リラキシン1/2, -3およびインスリン様ペプチド3, -4, -5, -6 の6種類の存在が明らかになった。更にリラキシン関連ペプチド遺伝子は、魚種を含む全ての脊椎動物のゲノムデータベースでもその存在が確認されている。しかし、リラキシン関連ペプチドの生理機能についてはその機能が多岐にわたるため、核となる働きが明確に分かっていないのも事実である。そこで本研究では哺乳類以外の動物群でのリラキシン関連ペプチドの機能を探ることによって根源的な機能を明らかに出来るのではないかと考え、真骨魚類を用いてリラキシン関連ペプチドの機能解析を目的として研究を進めた。 平成25年度はイトヨを用いて、リラキシン関連ペプチドの浸透圧調節に関連する役割について重点的に解析を進めた。淡水型・海水型イトヨを異なる塩分環境で飼育した後、脳におけるリラキシン関連ペプチド遺伝子の発現解析を行った結果、ほぼすべてのリラキシン関連ペプチド遺伝子が環境浸透圧の変化に応答した。特にrln3bに分類される遺伝子発現が海水型イトヨにおいて環境浸透圧の上昇に伴って有意に増加することが分かった。また、リラキシン関連ペプチドの受容体も淡水型・海水型イトヨにおいて異なる発現パターンを示すことも明らかとなった。これらの結果は真骨魚類においてリラキシン関連ペプチドが浸透圧調節に何らかの働きをしている可能性を支持する結果であった。
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