研究課題/領域番号 |
24770060
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
蓮沼 至 東邦大学, 理学部, 講師 (40434261)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 求愛行動 / 有尾両生類 / ホルモン / 脳 / 下垂体 |
研究概要 |
アカハライモリ求愛行動発現に対するプロラクチン(PRL), アルギニンバソトシン(AVT)とステロイドホルモンの協調作用を解析する上で、ステロイドホルモン受容体のタンパク質レベルでの解析が欠かせない。本年度はイモリ中枢神経系や嗅覚上皮におけるアンドロジェン受容体(AR)およびエストロジェン受容体(ER)の発現を解析することに重きをおいた。今回我々はアカハライモリAR cDNAのクローニングを行い、推定されるアミノ酸配列が724残基からなることを明らかにした。これは有尾両生類で初の報告である。次いでRT-PCRで雌雄のイモリ中枢神経系と嗅覚上皮でのAR, ERα, ERβの発現を解析した。これら器官・組織ではARおよびERβが雌雄でほぼ同レベル発現していることがわかったが、哺乳類では生殖制御に重要とされるERαは雌雄ともに発現を確認できなかった。以上のことからARとERβに的を絞り、タンパク質レベルで解析ができるように、それぞれのタンパク質分子を特異的に認識する抗体の作製を試みた。ARについては抗原部位としてN末端の23残基からなるペプチドを選択し、ERβの場合、C末端側の18残基のペプチドを抗原とした。作製した抗イモリAR抗体の特異性は、イモリARを発現させたCOS7細胞抽出タンパク質やAR遺伝子を発現する精巣や腹部肛門腺の抽出タンパク質を用いたウエスタンブロット解析により確認した。また、この抗体を用いた免疫組織化学的手法により、精巣の精原細胞や精細管間隙の細胞、腹部肛門腺の上皮細胞の核が特異的に染色されてくることを確認し、その有用性を実証できた。雄イモリ脳では少なくとも大脳の外側外套部、扁桃体、間脳の視索前野でARが発現していることを確認した。ERβに対する抗体については現在特異性を確認しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有尾両生類ではじめてアカハライモリARタンパク質の推定されるアミノ酸配列を明らかにした。また、雌雄イモリ中枢神経系および嗅覚上皮にARおよびERβ遺伝子が発現していること、また、ERαは上記器官・組織には発現していないことを明らかにした。また本研究で重要なツールとなる抗イモリAR抗体の作製に成功した。これにより、タンパク質レベルでARの解析が可能となった。これらの成果は学会発表レベルで公表できていることから、このような自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後はPRL、アンドロジェン、エストロジェンが中枢神経系に発現するPRL受容体やAVT前駆体、AVT受容体発現に対してどのような影響があるかどうかを解析することに重きをおく。また、AVTについてはPRLとステロイドホルモンがその放出にどのような影響があるかについても解析を進める。まず抗イモリERβ抗体の特性が確認でき次第、雌雄イモリの中枢神経系、嗅覚上皮のARおよびERβの発現部位を詳細に解析する。また同時にそれら局在とAVT前駆体、AVT受容体、およびPRL受容体の局在と比較も行なう。精巣および卵巣を除去したイモリを準備し、それぞれにPRL、アンドロジェンおよびエストロジェンを単独または混合投与する。脈絡叢と間脳に発現するPRL受容体や、視索前野に発現するAVT前駆体、間脳および延髄に発現するAVT V1aタイプ受容体mRNAの発現をリアルタイムPCRやin situ hybridizationにて解析する。また、同時に血中のAVT濃度も測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の当初計画から約40万円を翌年度使用額として残した理由は、年度末に、より特異性の高い抗AVT抗体の作製を依頼しようとしたが、その完成に数ヶ月かかるため、翌年度に持ち越したためである。平成25年度ではAVTの定量が研究遂行にとって重要なポイントになるが、抗体の特性を高めることにより、より精度よく血中や脳内のAVT量を定量することが可能となる。次年度の研究費の使用計画としては、カスタム合成ペプチド、抗体、実験用試薬、プラスチック器具等の用品の購入を主な支出用途とし、さらに成果発表のための旅費や投稿論文の英文校正の費用、謝金等の支出が必要となる。
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