研究課題
本研究では、アカハライモリ雄の求愛行動発現に必須と考えられる雄性ホルモンの中枢内での作用部位の詳細な解析を行い、求愛行動発現にホルモンが協調的に作用するメカニズム解明に向けて基盤となる成果を得た。抗イモリアンドロジェン受容体(AR)抗体を作製し、これを用いた免疫組織化学で繁殖期雄イモリ脳内でのAR発現部位を特定した。大脳では嗅球、外側外套、扁桃体、間脳では視索前野、腹側・背側視床下部、中脳の視葉、延髄でAR免疫陽性細胞が観察された。嗅球、外側外套、扁桃体では嗅覚情報の伝達に重要な部位と考えられている。求愛行動は性成熟した雌の存在が不可欠であり、求愛行動発現の引き金は雌が放出するフェロモンと推定されている。さらに嗅球ではドーパミン産生細胞がAR免疫陽性であった。嗅球のドーパミン産生細胞は介在神経であることが知られていることから、嗅覚(フェロモン)情報の処理に雄性ホルモンが関与する可能性は高いと考えられる。また、間脳視索前野には、雄性ホルモン以外に求愛行動発現に関わるプロラクチンやアルギニンバソトシンの受容体も発現していることが分かっており、これらホルモンとの協調作用を解析する上で、同神経核の重要性を示している。また、延髄では、尾を振る行動に直接的に関与するとされる第8脳神経根近傍のマウスナー細胞がAR免疫陽性であった。マウスナー細胞は繁殖期雄で、細胞体や核が大きくなる。この現象はプロラクチンと雄性ホルモンによることが知られており、少なくとも雄性ホルモンがマウスナー細胞に直接作用する可能性が示された。本研究より繁殖期雄イモリ脳内では求愛行動発現に関与すると考えられている神経核でのAR発現を確認した。特に求愛行動発現にキーとなるフェロモン情報処理や尾を振る行動に関与する部位や細胞でのAR発現は、雄性ホルモンが求愛行動発現に不可欠であることを裏付ける有力な情報と言える。
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Journal of comparative neurology
巻: 印刷中 ページ: 19
10.1002/cne.23619.
International Review of Cell and Molecular Biology
巻: 304 ページ: 191-225
10.1016/B978-0-12-407696-9.00004-X