研究課題/領域番号 |
24770068
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
宇田 幸司 高知大学, 教育研究部自然科学系, 講師 (10448392)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | d-アミノ酸 / ラセマーゼ |
研究概要 |
アミノ酸には,L体とD体の二種類の鏡像異性体が存在しているが,動物の生体内にはL体のアミノ酸のみ存在し,D体のアミノ酸(D-アミノ酸)は生体内には存在しない非生体型のアミノ酸であると考えられてきた。しかし,1980年代以降,光学分割技術の発達により,動物の生体内にも遊離のD-アミノ酸が存在することが明らかになり,その存在と,生理的な役割の解明に多くの研究者が取り組むようになった。特に,軟体動物や節足動物では遊離のD-アラニンやD-アスパラギン酸が浸透圧調整物質等として機能し,哺乳類では遊離D-セリンやD-アスパラギン酸が神経伝達に関与する事が報告されている。さらに,これらの遊離D-アミノ酸は対応するL-アミノ酸から異性化酵素(アミノ酸ラセマーゼ)により生合成されることも明らかとなり,アラニンラセマーゼが軟体,節足動物から,アスパラギン酸ラセマーゼが軟体,節足,脊椎動物から,セリンラセマーゼが節足,脊椎動物から報告されている。しかしながら,これまでのD-アミノ酸及びその代謝酵素に関する研究は一部の動物種についてのみ行われ,動物界全体における広範囲な解析は行われいないのが現状である。 本研究では様々な動物からD-アミノ酸及びその合成酵素であるアミノ酸ラセマーゼ遺伝子の単離を試み,D-アミノ酸及びアミノ酸ラセマーゼの動物界における分布とその機能を明らかにすることを目的とした。 本年度は申請者が既に塩基配列データベースの解析によってアミノ酸ラセマーゼホモログの存在を確認した生物種から,実際にその遺伝子の単離を試みた。具体的には,環形動物ヒル,刺胞動物ネマトステライソギンチャク,原生動物テトラヒメナからセリンラセマーゼやプロリンラセマーゼホモログを単離し,その酵素活性の解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,幾つかの動物からアミノ酸ラセマーゼホモログ遺伝子の単離または全合成に成功し,そのリコンビナント酵素の発現系の構築も順調に進んでいる。 一方で。本年度に予定していた幾つかの動物からのアミノ酸の抽出とそのL/D体の分析は,予定していたサンプル数よりも少ない数での解析となっており,残りのサンプルの解析については次年度以降に持ち越した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,これまでに単離されたアミノ酸ラセマーゼホモログのリコンビナント酵素を用いた酵素機能解析を進める。また,アミノ酸ラセマーゼホモログが単離された動物を中心として,様々な動物からD-アミノ酸の定性分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に,十種類程度の動物でのD-アミノ酸の定性分析を予定していたが,いくつかの動物サンプルの入手が遅れたため,半数程度のサンプルの分析を終えるにとどまった。そのため,残りのサンプルの分析のための研究費を繰り越すこととした。 次年度以降に,当初の研究計画に加えて,本年度に解析できなかった動物サンプルでのD-アミノ酸の定性分析を行うことを予定してる。繰り越した研究費は,当初の予定通り,残りのサンプルの解析に費やす。
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