研究課題/領域番号 |
24770069
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中野 裕昭 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70586403)
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キーワード | 平板動物 / 発生 / 有性生殖 / 繁殖期 / 卵割 / 胚 / 進化 / 後生動物 |
研究概要 |
平板動物は直径1mm前後の円盤状の海産動物である。背側の細胞、腹側の細胞、及びその間の間充織様細胞の3層、5種、数千個の細胞で構成される非常に単純な体制をもつ。器官や組織を欠き、神経細胞や筋肉細胞ももたない。背腹の区別はあるものの、前後軸や左右軸はなく、現生の中で最も祖先的な形質を残す動物の一つとされる。しかし、未だにその精子や卵割期以降の発生の報告はなく、実験室飼育系統以外の研究が進んでいない動物である。 今年度は、昨年度に引き続き所属機関である筑波大学下田臨海実験センターで平板動物の採集を行い、採集個体数、及び採集個体のサイズを測定した。また、その際に一匹一匹を実体顕微鏡下で観察し、卵や胚の有無やその個数を確認した。その結果、昨年度に推定された平板動物の繁殖時期の再現性が確認された。また、昨年度と今年度に得られた少数の卵や胚の解析も行った。 また、平板動物の生殖関連遺伝子発現の網羅的解析に関して、予備的な実験に成功した。 平板動物はその単純な体制から種の判別が困難で、現在科学的に記載されている種は平板動物門全体でTrichoplax adhaerens(センモウヒラムシ)1種のみである。最近の分子系統解析や電子顕微鏡を用いた形態学的観察からは複数のグループが門内に存在することが明らかになったが、それらのグループが別属、別種、亜種、何に相当するか結論は出ていない。異なったグループ同士で有性生殖が行われるか調べるために下田、及び日本各地で採集された平板動物の分子系統解析を行い、日本に生息するグループに関して予備的な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年連続で同じ時期に平板動物の卵、胚が得られており、下田に生息する平板動物の繁殖時期はほぼ決定できた。また、卵や胚の固定も少ないながら行えた。しかし、所属機関である筑波大学下田臨海実験センターの改修工事が行われており、予定していた遺伝子発現解析などの一部の実験が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
改修工事は平成26年度6月に終了予定であり、工事終了後は速やかに延期された遺伝子の発現解析実験や抗体染色法などに取りかかる。また、工事中も定期的な採集を継続することで、繁殖時期の再確認を行う。そして、繁殖時期には多くの成体を採集することで、より多くの胚や卵を獲得する予定である。そして、卵や胚の観察を行う。また、平板動物の有性生殖行動の観察にも挑戦したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属機関である筑波大学下田臨海実験センターの改修工事が平成25年度中に終了予定であったが、平成26年6月まで延長されることになったため、予定していた実験が実施できなかった。また、改修工事が行われる部屋への機器の納入も不可能となり、その購入を延期したため、次年度使用額が生じた。 改修工事終了後には、延期していた顕微鏡セットの購入を予定している。また、延期していた実験で用いる、遺伝子実験用の試薬、動物飼育用のプラスティック器具、ガラス器具などの消耗品の支出も予定している。そして、これまでに得られた結果を学会発表する際の旅費も予定している。
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