研究概要 |
1. 解析パイプラインの完成:条鰭類の高次系統解析に有用な相同遺伝子を選定する解析パイプランンを作成した.このパイプラインは,国際データバンクから BLAST 検索によって得られた類似性の高いタンパク質遺伝子データについて遺伝子系統樹を構築し,四足類 (Human, Chicken, Xenopus) と真骨類 (Zebrafish, Cod, Medaka, Stickleback, Tetraodon, Fugu) の相同遺伝子を選定するものである.解析マーカを選定するだけでなく四足類と真骨類間の相同遺伝子を選び出すものであるため,系統解析だけでなく多くの比較ゲノム研究に有用なものである. 2. データベースの完成:解析パイプラインによる解析を行い,四足類と真骨類からなる確実なオーソロガス遺伝子グループ を 7019 見いだし,これをデータベース化した.これらのうち 1040 オーソロガス遺伝子グループでは真骨類特異的全ゲノム重複由来の重複遺伝子が残されていた一方で,残りの 5979 オーソロガス遺伝子グループは,Zebrafish が分岐する以前にパートナー遺伝子を失っていた. 3. 系統解析に有用な遺伝子: 後者のグループで解析に用いた脊椎動物 9 種すべてが 1 つの遺伝子を保持していた 1241 オーソロガス遺伝子グループは,系統解析に有用な遺伝子グループと考えられる. 得られた成果を,日本進化学会で発表した.この内容をさらに発展させたものを,現在論文としてまとめている段階である. 井上 潤.真骨魚類ゲノムの進化特性: トランスクリプトーム相同遺伝子データベースの構築.日本進化学会年会.首都大学東京 (2012 年 8 月).
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次年度の研究費の使用計画 |
平成 25 年度の研究費の使用計画として,交付申請書では物品費 920,000 円,旅費 30,000 円,その他 50,000 円を提示した. 物品費は平成 24 年度からの繰り越し研究費と合わせて,上記「今後の研究の推進方策 2. トランスクリプトームデータの解読」で大半を使用する予定である.申請者が現在所属する沖縄科学技術大学院大学では,トランスクリプトームデータを含むゲノムデータ解読を,ランニングコストのみで請け負う精度が確立している.このシステムを用いることで,アロワナ類やカライワシ類,アミア,チョウザメ類など数種のトランスクリプトームデータ解読を行う予定である. 旅費は,国内外で行われる学会に出席し,これまでに得られた研究成果を発表するのに使用する. その他に関しては,主に論文投稿に関わる費用 (掲載料や英文校閲料) に使用する.
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