研究課題/領域番号 |
24770073
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
島田 知彦 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (30610638)
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キーワード | ゲノムサイズ / 地理的変異 |
研究概要 |
平成25年度は、前年度に得られたツチガエルのゲノムサイズの地理的な変異に関する情報を補完するために、各地から得られたサンプルを追加するとともに、前年度は予備的にしか得られなかった佐渡島固有種(サドガエル)や韓国産の近縁種のデータを追加した。また、前年度に行ったDAPI染色による特定の塩基のみを染色する実験は、機械的な誤差が大きく、再現性が低かったため、エチジウムブロマイドを用いて全塩基を染色する方法に切り替え、前年度に冷凍保存したサンプルを利用してできる限り全個体のデータを取り直した。その結果、改めて関東産のツチガエルと佐渡島固有種において大型のゲノムサイズが確認された。その一方で、上記以外の地域で大型のゲノムサイズを呈する地点も確認され、ゲノムサイズと系統関係が完全には符号しない結果が得られた。 ゲノムサイズの大きい関東型と小さい西日本型の交雑に由来するとされる系統(XY型、ZW型、neoZW型)においては、前年度行ったDAPIによる実験だけでなく、エチジウムブロマイドを用いたより正確性の高い実験においても、西日本型とほとんど変わらないゲノムサイズを持っていることが確認され、少なくともゲノムサイズを規定している要因に関して、それらの各系統は西日本型の特徴を受け継いでいることが示唆された。 またゲノムサイズが異なることが判明した関東地方産と東海地方産の個体を交配して交雑個体のゲノムサイズを調べる試みを行ったが、幼生・幼体を用いたゲノムサイズ測定の結果が必ずしも安定しなかったため、得られた幼体の飼育を継続するとともに、成体から採取した血液を用いた実験と同じレベルの結果が得られるよう、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度にはゲノムサイズの異なる個体群間での交雑実験を行い、それによって得られた個体のゲノムサイズの測定を予定していたが、幼生や小型の幼体から得られる血液が少量すぎ、成体と同等の質の結果が得られなかったため、詳細な解析を行うことができなかった。 また、過去の異質な個体群間の交雑に由来するとされる個体群の遺伝的な組成を調べるために、核ゲノム上の遺伝子の塩基配列を比較する予定であったが、これに関しては候補となる遺伝子領域の検討にとどまっており、実際に多くの産地のサンプルを用いて比較を行うには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、これまでに得られたゲノムサイズの地理的変異の概要をまとめ、できるだけ早い段階での論文化を目指す。また、ゲノムサイズが大きく異なる関東地方産と東海地方産の交雑個体の成長を待ち、それらのサンプルのゲノムサイズを測定する。 また核ゲノム上の各遺伝子とミトコンドリアゲノムの遺伝情報の比較を行い、交雑実験の結果と合わせ、ゲノムサイズの異なる系統同士が側所的に分布している地域での遺伝的交流の実態を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
遠隔地での採集に関して、現地協力者に送ってもらう等の対応をし、旅費を当初の予定より少なく計上した他、DNA実験が予定より遅れており、配列決定等に必要な予算を次年度に繰り越した。 平成26年度は、ゲノムサイズの異なる個体群同士が分布を接している地域において、核ゲノム上の遺伝子の塩基配列の決定を行うため、当該地域での野外調査に係る旅費のほか、DNA実験器具・試薬に予算を使用する。
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