研究課題としているツチガエルのゲノムサイズに関して、平成25年度に行ったDAPI染色に基づく結果と平成26年度に行ったエチジウムブロマイド染色による結果は、おおむね一致していたものの、一部で齟齬が見られた。このため、標本を追加して再実験を行うとともに、これまでに得られた波形を精査して比較の見直しを行った。その結果、どの時期における実験でも、関東産の個体群でゲノムサイズが大型である傾向が見られたものの、実験時期によってその値は大きく異なっており、単純な議論は難しいことがわかった。関東産とそれ以外の地域産のゲノムサイズの差はおおむね全ゲノムサイズの3%程度であるが、これは使用している機材の検出限界に近く、実験室温や光量、解凍時間、染色時間等、様々な条件を統一して最適化を目指したが、結局安定した結果を得るには至らなかった。以上のような結果であったため論文化は難行しているが、現時点の結果でも一応の地理的傾向は認められているため、最低限結論づけられることに内容を絞って論文を準備中である。 上述のようにゲノムサイズの測定が安定しなかったため、地域間の交雑個体のゲノムサイズに関してもはっきりした結果を得ることができなかった。また、ゲノムサイズの地理的変異と合わせて議論を進める予定であった核ゲノムの塩基配列に基づく系統関係の推定に関しては、解析に適した遺伝子領域の検討を行い、いくつかの領域において地理的な変異を検出したものの、その量は系統推定を行うには十分であるとは言えず、こちらも単独で論文としてまとめるには至っていない。 一方、各地の標本を収集する中で、対象としているツチガエル、サドガエルに関して形態的な変異に関するいくつかの新知見が得られたため、一部を論文として出版した。
|