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2013 年度 実施状況報告書

ヒゲクジラの嗅球と嗅覚認識に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24770075
研究機関京都大学

研究代表者

岸田 拓士  京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (40527892)

キーワードホッキョククジラ / クロミンククジラ / 嗅球 / ゲノム / 化石鯨類
研究概要

今年度は、ヒゲクジラの嗅覚に関して形態とゲノム両面からの研究を行い、それぞれで結果を出すことができた。具体的には次の通りである。
1. ホッキョククジラの脳の嗅球に関して、嗅覚マーカータンパクなどの抗体を用いた免疫組織化学的研究を行った。嗅球の腹側には、嗅皮からの嗅覚情報が投射される糸球が密に分布していたが、背側には糸球がほとんど存在しなかった。この結果は、ホッキョククジラの嗅球には背側領域が存在しないことを強く示唆している。現在、結果をまとめて論文執筆中である。
2. クロミンククジラBalaenoptera bonaerensisの全ゲノムシークエンスおよびアセンブルを行った。その結果、クロミンククジラは、嗅球の背側領域特異的に発現する遺伝子を全て失っていることが解明された。またこのゲノムアセンブルを、近縁種であるハクジラやウシのゲノムと比較したところ、これらの遺伝子は、ウシ-鯨類分岐後、ハクジラ-ヒゲクジラ分岐前までに失われたことが解明された。さらには、ハクジラ-ヒゲクジラ分岐前の共通祖先であるパキケトゥスやレミングトノケトゥスの化石を調べたところ、パキケトゥスの頭蓋骨は嗅球背側にも嗅神経が通る篩板が存在する一方で、レミングトノケトゥスの嗅球背側には存在しないことが解明された。この結果は、鯨類の系統で、パキケトゥスの出現後、レミングトノケトゥスの出現前までに嗅球の背側領域、つまり腐敗物臭や天敵臭に対する先天的な逃避行動を司る領域が失われたことを示唆している。結果をまとめて論文を執筆し、現在専門誌に投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初は嗅覚受容体のアンプリコンシーケンスなどを行う予定であったが、全ゲノムのde novoアセンブル可能な解析環境などが周辺に備わったため、思い切ってヒゲクジラの全ゲノム解読を行った。その結果得られたゲノムアセンブルの質も良く、当初の計画よりも優れた結果を得ることができたと考えている。

今後の研究の推進方策

今年度の結果から、鯨類の嗅覚能力の進化に関しては、当研究費応募時に提示した仮説がおおむね正しいことが検証されたものと考えている。こうした特異な進化は鯨類に限られるのか、それとも海洋環境へと適応進化を遂げることで必然的に起こることなのか。この疑問が次に来る。平成26年度は、鯨類だけでなく、海牛類やウミヘビ類など多くの海洋性羊膜動物で同様の研究を幅広く行う。さらには、論文として出版された結果に関してはウェブサイトや講演などを通して広く国民に発信し、我が国の基礎科学の発展や国民の科学に対する興味の増進に寄与したい。

次年度の研究費の使用計画

所属部局に交付された研究予算でクロミンククジラの全ゲノム解読ができたため、当初予定していた嗅覚受容体遺伝子アンプリコンのNGS解析などが必要なくなったのでその分2013年度の研究費使用額が減少した。
鯨類以外の海洋性羊膜動物の嗅覚の進化に関する実験を行うことを予定しており、この実験費用に充当する。また、研究結果を広く周知させるために学会などでの講演を積極的に行いたく考えており、これらの旅費にも充当する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 系統的に離れた動物のゲノム領域を用いたターゲットリシーケンスの試み2013

    • 著者名/発表者名
      岸田拓士
    • 学会等名
      NGS現場の会 第3回研究会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市
    • 年月日
      20130904-20130905
  • [学会発表] 海洋環境適応と鯨類の嗅覚の進化

    • 著者名/発表者名
      岸田拓士
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      千葉県千葉市 幕張メッセ
  • [学会発表] 鯨類の微量アミン受容体(TAAR)遺伝子クラスターの解析

    • 著者名/発表者名
      岸田拓士、今井啓雄、阿形清和
    • 学会等名
      日本進化学会第15回大会
    • 発表場所
      茨城県つくば市

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公開日: 2015-05-28  

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